第九章 記録の巻物 その三

「炎の子ら」(Sons of Fire)が、彼らと彼らの世帯と彼らの畜牛、そして熟練工の全ての道具が、「霧の国」(Land of Mists)へとやって来た。彼らと共に他の者たち、エジプト人とジャヴェン人(men of Javen)がやって来た。更に、炎の子ら程勇敢ではない異邦人たちがいた。彼らの多くは生気が無く、その心は悲しんでいた。

彼らは野蛮人たちの間に上陸し、そして「サハム」(Saham)近くの「サデル」(Sadel)と呼ばれる場所に街と港を建造して、その周囲から森の中へと道を切り開いた。しかし、彼らは野蛮人たちや異郷の地の異邦人たちによってその勢力範囲を抑え込まれていた。街は売買の為の場で、人々が行き来した。船が布地や陶器、器具や戦争用の武器、それとあらゆる種類の物を積載して入港した。また、船は土を掘り起こす野蛮人たちからの品物を積載して出港した。街の場所は申し分なかった。というのも、その地は肥沃であり、良く灌漑されており、そして湾は大きな岩で防護されていたからである。

ホスキア(Hoskiah)が来た時、彼は街の為に法規を定めさせ、それは神殿の法廷に保存されていた。

次の記録が彼の命令によって作られた:

「貴方がその父や母、あるいは彼らの父や彼らの母を呪う事、あるいは怒りに乗じて彼らに手を挙げる事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその左肩を熱した鉄で焼かれるものとし、労役とその期間が貴方に果たされる。」

「貴方が嘘をついて他の人の評判を無断借用する事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は唇の上に熱した鉄で焼き印を押されるものとする。」

「貴方が他の人の妻を犯す事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は脚の基部および背中と脇の下、並びに口および鼻の上に熱した鉄で焼き印を押されるものとし、戦争において武器を帯びるのでなければ、我々の間から追放されるものとする。」

「妻が夫ではない男と寝る事は、それが誰であっても、非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、彼女は姦婦用の鞍の上で自分の時間を耐えるものとし、空火注1 で癒される事はないものとする。」

「貴方が情欲に身を任せて子供に陰茎を挿入する事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は去勢され、その傷は熱した鉄で癒されるものとする。」

「貴方が女児の脚の間に手を差し込むのは非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその左掌、左頬、そして太腿の間を熱した鉄で焼かれるものとする。」

「貴方が、客人として貴方をかくまっている人の家族を犯す事は、いつでも非合法である。もしその禁じられた事が自由人の男女に対して行われるのであるならば、貴方はその脚の基部と脇の下を熱した鉄で焼かれるものとし、野蛮人たちの慣習に従って水死するものとする。奴隷や農奴の男女に対してであるならば、貴方は背面と脇の下を焼かれるものとし、そして彼らの価額をその主人へと支払うものとする。」

「貴方が他の人に対してその人が訴訟をこうむるように虚偽を話す事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその人と同様な扱いを受けるものとし、貴方の舌は熱した鉄で焼かれ、そして評議会で定められた賠償を支払うものとする。」

「貴方が貴方の家の娘を野蛮人へと嫁がせるのは、その娘が貴方に恥をもたらした者でないならば、非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は自分の財産と世帯を取り上げられるものとする。」

「貴方が、貴方の世帯の男が野蛮人と密通する事を許容する事は、非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方の左大腿が熱した鉄で焼かれるものとする。貴方の世帯のその男は彼の脚の基部と脇の下が焼かれるものとする。もし同じことが再び行われるのであるならば、貴方は背部を熱した鉄で焼かれるものとし、貴方の財産の十分の一が取り上げられるものとする。貴方の世帯のその男は熱した鉄でその左目を潰されるものとし、彼の脚の基部が焼かれる注2 ものとする。」

「貴方が、貴方の世帯の女が野蛮人と密通する事を許容する事は、非合法である。もしその禁じられた事が行われ、かつその女が自由人注3 であるならば、貴方はその世帯と財産を取り上げられ、その女は女たちが死ぬ様式にのっとって死ぬものとする。その女が奴隷または農奴であるならば、貴方はその財産の十分の一を取り上げられるものとし、その女は、女たちを焼く様式にのっとってその秘部を焼かれるものとする。」

「貴方が野蛮人と密通する事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその財産と世帯を取り上げられ、評議会の奴隷とされるものとする。」

「女性が自分の家庭の男性ではない男性たちの目に自分の胸を露にする事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、その女は、女たちを焼く様式に従って、その胸の間を焼かれるものとする。」

「女が自分の秘部を任意の男に露とする事は、その男が自分の夫や主でないならば、その女が誰であっても非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、その女は、女たちを焼く様式に従って、七つの場所がそれぞれ焼かれるまで、日ごとに焼かれるものとする。もしその女が自分の世帯以外の男とそのような事を行うのであるならば、その女の夫や主はその右太ももを熱した鉄で焼かれるものとする。」

「貴方が故意に自分の世帯でない任意の女性やおとめに自分の裸を露とする事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は背中を熱した鉄で焼かれるものとする。」

次の事は、その女たちを尊重する野蛮人たちの目前で行われた事ゆえに作られた法規である。

「貴方が我々の間の男や女、あるいは子供を殺したり不具にするのは、それが誰であっても、非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、野蛮人の慣習に従って注4、命に対しては水刑によってその命が取り上げられるものとする。四肢に対しては四肢が、目に対しては目が取り上げられるものとする。ただし、貴方の間で戦争における武器の担い手の一人であるならば、その者は戦うことが出来ない様に不具にされないものとするが、殺人に対してはその者は殺されるものとする。」

「貴方が盗んだり、詐欺によって奪う事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、為された損害は二倍で返還されるものとする。もし同じ人または他の人に対して再び行われるのであるならば、貴方は右前腕の上に熱した鉄でも焼かれるものとする。しかし、ある者が簡単に奪われるように愚かにふるまうのであるならば、注5 ただ奪われた分だけの価額が返還されるものとする。」

「貴方が故意に書き物や書き物の中の記録、あるいは意味を持つ印や名前の印を損壊する事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は両掌を熱した鉄で焼かれ、その財産の四分の一を取り上げられるものとする。」

「貴方が故意に我々の間の他の人の財産に損害を与える事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は、自分が悪い事をした相手にその価額を支払う事によって償うものとする。」

「貴方が加工された鉄を野蛮人の他の物品と交換することは非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は左足裏と右掌を熱した鉄で焼かれるものとする。」

「貴方が欺いて野蛮人たちと取引をしたり、彼らから盗んだりする事は非合法である。あるいは、彼らを傷つけたり、彼らの財産に損害を与えることも非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその右掌を熱した鉄で焼かれるものとする。貴方は我々の国境の外部に、野蛮人たちによって捕らわれる場所へ武器無しで追放されるものとし、彼らは自分たち自身の慣習に従って貴方を取り扱うことが出来る。」

「貴方が金や銀を他の物質で増量することは非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその財産と所有物の半分を取り上げられるものとし、その両耳を熱した鉄で焼かれるものとする。」

「貴方が他の人の住宅やその周囲の敷地に人目につかない様に入る事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はもしその住宅内にいるのであるならば、熱した鉄でその左目を潰されるものとし、もしそれが再び行われるのであるならば、その右目を潰されるものとする。もし貴方が住宅の周囲の敷地に人目につかない様に注6入るのであるならば、その足の基部と背中を熱した鉄で焼かれるものとする。もし貴方が武器を携帯した状態で発見されるのであるならば、貴方はその場所の所有者の奴隷となるものとする。」

「貴方が欲望を満たすために動物を使うのは非合法である。もしその禁じられた事が行われ、一方がもう一方に陰茎を挿入するのであるならば、貴方は去勢され、その傷は熱した鉄で癒されるものとする。戦争における武器の担い手でない限り、貴方は我々の間から追放され、問題の動物は死ぬものとする。もしどちらももう一方に陰茎を挿入していないのであるならば、貴方はその秘部を熱した鉄で焼かれるものとする。」

「貴方が他の人の井戸や他の人が飲料とする綺麗な水を汚すことは非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその背中を熱した鉄で焼かれるものとする。」

「貴方が他の人の獣群や穀物、動産や財産に損害を与える事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその損害を償うものとする。もし再びそれをその人や他の人に行うのであるならば、貴方は左足の基部を熱した鉄でも焼かれるものとする。」

「夜明けから夕暮れまで二日間に渡って寺院の市の門で立つことによって自分自身が公共の女性であると最初に宣言することなしに、女性が男性たちの要求に応じて自分を売ることは非合法である。もしそのような事(定められた様式で公言してから売春を行う事)が行われるのであるならば、その女には何の罪も付与される事はないが、もしその禁じられた事が行われるのであるならば、その女は女性の焼き方に従って、その頬と腕と腹を焼かれるものとする。もし彼女が自分自身を(売春婦として)宣言することなしに再び同じことを行うのであるならば、彼女は奴隷として売られるものとする。彼女の価額は統治者へとひきわたされるものとする。」

「誰でも人の妻や農奴や奴隷が、男性たちの要求に応じて、自分自身を売る事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、それが夫や主たちに対して秘密裏に行われた場合を除いて、その夫または主は口と背中と脚の基部を熱した鉄で焼かれるものとする。その(売春した)女は売られて、その価額は統治者へと引き渡されるものとする。」

「貴方が、女のような流儀の男として、夜明けから夕暮れまで一日の間寺院の市の門で立つ事によって自分の本質を宣言することなくそのようにふるまう事は、非合法である。もしそのような事が行われるのであるならば、女のような流儀の男としての貴方の振舞いそのものに何の罪も付与される事はないものとする。しかしもしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は腹と背中を熱した鉄で焼かれるものとし、市場で売られ、貴方の価額は統治者へと引き渡されるものとする。」

「女のような流儀の(法律によって)保護されていない男が世帯の主となったり、妻を娶ったりすることは非合法である。彼は飲食や睡眠、衣類や自分の工芸の営業に必要なもの以外、何も所有することが出来ない。彼は一部屋の住居を所有することが出来るが、もし彼が戦争にて武器を担うのであるならば、彼は任意の大きさの住居を構えることが出来る。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、彼はその背中と胸を熱した鉄で焼かれるものとし、そして奴隷として売られ、彼の価額は統治者へと引き渡されるものとする。」

「貴方が自分の欲望を自分の世帯の男性と満たす事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、一方がもう一方の手中にあるのでなければ、貴方がた両者が共にその両脇の下を熱した鉄で焼かれるものとする。」

「女性が自分の子供を殺したり、世話を怠る事によって死なせたりする事は非合法である。もしその禁じられた事が行われ、かつその子供が離乳していないのであるならば、その女は奴隷として売られ、その価額は統治者へと引き渡されるものとする。もしその子供が離乳しているのであるならば、命に対しては命が取り上げられるものとする。」

「貴方が、世帯の主であるとして、貴方の場所に家令を指定することなく、あるいは成人の息子が在宅でなく、二日と一夜に渡って我々の国境を越えて奥地へと出かける事は、非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその右足裏と背中を熱した鉄で焼かれるものとする。もし貴方が外力によって拘留されるのであるならば、貴方は焼かれないものとする。」

「貴方が自分の世帯に所属しない女性の秘部を触る事は、彼女が男性に売春をする女でない限り、非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は右の掌と指、そして左頬と背中を熱した鉄で焼かれるものとする。もし再びそれを行うのであるならば、貴方はその左目も熱した鉄で潰されるものとし、更に再び行うのであるならば、その右目も同様とする。」

「貴方が欲望を満たすために力づくで自分の世帯に所属しない女性を得る事は、彼女が自分を男性に売る女でない限り、非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその両眼を熱した鉄で焼かれるものとする。」

「貴方が野蛮人たちの神聖なる場所や彼らの寺院へと入る事、あるいは「ラブキムラ」(Rabukimra)の千歩以内を通過することは非合法である。貴方は彼らの祝祭にこれらの場所の外側から出席することが出来る。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその左足裏を熱した鉄で焼かれるものとする。」

「貴方が自分自身で携帯し、あるいは自分の家庭内に他の神々の護符を有する事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は自分の所有物や財産の十分の一を寺院に支払うものとする。」

「貴方が客人として亭主の住居にいる間、自分自身の体にあるいは亭主の住居に武器を隠し置く事は、非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその左腕の筋肉と額を焼かれるものとする。」

「貴方が、人々が「彼の思考は非合法な事に向かっている」と言うであろう非合法な行いへ向かって外観上行動する事は、非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、それが相応しいものとして評議会が貴方に赦免を認めるものとされる場合を除き、貴方は既にその非合法な振舞を行ったものとされるものとする。」

「貴方が非合法な行いに向けて他の者と話をすることは非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は下唇と左掌を熱した鉄で焼かれるものとする。貴方がたの間でその事を糾弾する者は焼かれることがないものとする。」

「貴方が他の者に危害を加える様に在る事注7は非合法である。もしその禁じられた事が行われ、かつそれが深刻でなく、あるいは悪意を持つものでないのであるならば、貴方は償いを支払うものとする。もしそれがより深刻なものであるならば、貴方は上唇を焼かれ、更により一層深刻であるならば、舌が焼かれるものとする。」

「貴方が、貴方の世帯の女性が家の外の場所で酔う事を許容することは非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は、もしそれが二度起こるのであるとして、左大腿を熱した鉄で焼かれるものとする。もしそれが再び起こるのであるならば、貴方は左脇の下を焼かれるものとする。」

「異邦人が日没後に我々の国境内に留まる事は、彼がどこかの世帯の客人であるか、あるいはその保護下にあるのでない限り、非合法である。あるいは、彼が異邦人の路地に居留しているか、または彼が宣言されている場合でない限り。宣言されていない限り、如何なる者も十日を越える日数を留まってはならない。その宣言において、彼の過去の行いや来し方や行く末に虚飾があってはならないし、虚言が告げられてはならない。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、彼はその鼻を熱した鉄で焼かれ、我々の国境外に置かれるものとする。彼は戻る事が許されず、彼の動産は統治者へと引き渡されるものとする。日が下ると、全ての人がその異邦人に立ち去る事を命じ、彼を保護しないものとする。」

「貴方が、異邦人が行かねばならぬ時に、かつ何も悪いことが無いのに彼の出発を遅らせる事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は左背中を熱した鉄で焼かれるものとする。」

「女性が、保護される事なしに自分の家庭から立ち去る、あるいは日没後に自分の家の外に滞在する事は非合法である。もしその禁じられた事が行われ、かつ彼女が妻であるならば、彼女は左足裏を焼かれるものとする。もし彼女が奴隷または農奴であるならば、彼女は両足裏を焼かれるものとし、そして彼女が自由人や女中であるならば、彼女は左脚を焼かれるものとする。もし彼女が処女であるならば、彼女は革のスロング(throng)注8で打擲されるものとする。」

「男性がその手を自分の世帯の主に対して挙げる事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、彼は、自由人であるならば、右肩と背中を熱した鉄で焼かれるものとする。もし召使であるならば両肩と背中、そしてもし奴隷または農奴であるならば、両肩と背中、そして脚の基部を焼かれるものとする。しかし、その主が寝込む程に痛めつけられるのであるならば、彼を殴った者は捕らえられて監禁され、その主が再び起き上がるまで、毎日その体が焼かれるものとする。」

「貴方が自分の世帯の任意の女性やその保護下にある任意の自由人を折檻で元に戻らないように不具にしたり傷つけたりする事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は評議会が宣告するように熱した鉄で焼かれるものとする。」

「貴方が自分の世帯ではない任意の女性を折檻で殴ったり、あるいは怒って彼女に触れる事は非合法である。もしその禁じられた事が行われ、彼女に傷跡が無く彼女が自由人であるならば、貴方は右太ももと右脇の下を熱した鉄で焼かれるものとする。もし女中であるならば、右脇の下を、そしてもし奴隷や農奴であるならば、左太ももを焼かれるものとする。しかし、彼女に傷跡が付いたり不具になったりするのであるならば、貴方は彼女の主またはその世帯に支払いを行い、そして評議会の宣告に従って焼かれるものとする。」

「貴方が非合法に貴方の世帯から女性や子供を追いやるのは非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその財産と所有物の五分の一をもってその追い出された者に償うものとする。そして、その者たちは任意の他の世帯に入る事が出来、引き留められる事が無いものとする。」

「貴方が、家督職または後見職に置かれた時、貴方の世話の元に在る任意の者に対して不実な事を行う事は非合法である。あるいは、貴方を信用していた人に対して損失を招いたり危害を加えたりする事に関しても同様である。貴方はその家督にある家の中で見苦しく振舞ってはならないし、あるいは貴方を信用していた者の評判を貶めるような事をしてはならない。もしその禁じられた事が行われ、それが深刻であるならば、評議会は、野蛮人たちの慣習にのっとって、貴方を水死させることが出来る。しかし、それが深刻という程ではない場合は、貴方は評議会が宣告するように焼かれるものとする。」

「貴方や貴方の世帯の任意の男女が、太陽や炎で乾燥させたり漬物としたものでない限り、生の肉を食べる事は非合法である。血液は飲んではならない。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は左前腕を熱した鉄で焼かれるものとする。」

「貴方が野蛮人たちの間で酔っ払ったり喧嘩腰になる事は非合法である。あるいは、彼らが聞こえている所で彼らを呪ったり、彼らのいる場所で不相応な言葉を使うこと、彼らに我々の悪口を言う事も同様である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、最初は、貴方はその左脚を熱した鉄で焼かれるものとする。二度目には、左脇の下を焼かれるものとする。そして三度目には、唇を焼かれるものとする。懲罰のたびに、貴方は焼かれる時から日没まで縛られて、国境でさらし者にされるものとする。」

「貴方が寺院の敷地の中で小便をする事、あるいはそこで地面や床を汚す事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその背中と脚の基部と太腿の間を熱した鉄で焼かれるものとする。もしそれが再び行われるのであるならば、貴方は両目を潰されるものとする。」

「貴方が寺院の敷地内で唾を吐いたり、汚い言葉を使う事は非合法である。あるいは、そこで叫んだり、見苦しく声を張り上げたり、不敬な振舞をする事も同様である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は口と右耳を熱した鉄で焼かれるものとする。」

「貴方が寺院敷地内の物を破壊する事は、それが何であっても非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその両掌と太腿の間を熱した鉄で焼かれるものとする。この刑は、もし評議会がそれが相応しいと判断するのであるならば、野蛮人たちの慣習に従って、水死にまで増すことが出来る。」

「貴方が寺院敷地内から物を盗むことは、それが何であっても非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は、野蛮人たちの慣習に従って、水死するものとする。」

「貴方が寺院の僧侶や召使、あるいはその保護下にある者を殴る事は、それが誰であっても非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は熱した鉄で盲目とされるものとする。しかし、もし貴方が誰かを不具とするならば、貴方は、野蛮人たちの慣習に従って、水死するものとする。もしその(殴られた)者が寺院の奴隷や農奴であるならば、彼を殴る事によって貴方は脚の基部と太腿の間を熱した鉄で焼かれるものとする。もし彼が不具とされるのであるならば、貴方はその右目を潰されるものとする。」

「貴方が夜間こっそりと寺院の敷地内に立ち入る事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は熱した鉄で盲目とされるものとする。」

「貴方が、寺院の守護者の認可が無い限り、寺院の敷地内で金属の武器や鋭利に研いだ武器を帯びる事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその両脚の基部と左掌を熱した鉄で焼かれるものとする。」

「寺院に仕える者たちによって為されるのでない限り、寺院の敷地内でいかなる不法行為者をも捕らえる事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、その行いを命令した者は熱した鉄で盲目とされるものとする。その行いをした者は、両掌と両脚の基部を熱した鉄で焼かれるものとする。」

「本人の面前で為されるか、または寺院の市場の門で為されるかでない限り、統治者や評議会や指揮官たちや王子たちを非難する事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は口の両脇を熱した鉄で焼かれるものとする。しかし、「当敷地の神」(God of This Enclusure)について話す事を除いて、如何なる者も寺院の市場の門にて公に発言することに対する報いを受ける事はないものとする。」

「貴方が当「神の」敷地の中で「当敷地の神」(God of This Enclosure)を非難する事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその舌と口を熱した鉄で焼かれ、我々の国境から追い出されて、七年の間戻る事は許可されないものとする。」

「貴方が寺院の任意の僧侶を非難する事は、誰でも恐れる事無く自由に話すことが出来る日に「高僧」(High Priest)の面前でその非難をする場合を除いて、非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は背中と顎の下を熱した鉄で焼かれるものとする。

「貴方が僧侶や寺院の高位の召使であったり、あるいは彼らが許可した者でない限り、貴方が「主祭壇の場」(Place of the High Altar)やその周囲の禁じられた場所に近づいたり、あるいは「聖なる財宝」(Sacred Treasures)に触れる事は非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は熱した鉄で盲目にされるものとする。」

「もし貴方が妻帯しているのであるならば、処女を妻に迎えるのは非合法である。しかし、もし貴方に妻がいないのであるならば、貴方は処女と結婚することが出来る。貴方は三人よりも多くの妻を娶る事は出来ない。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方はその財産と所有物の四分の一を取り上げられ、それらは貴方が非合法に娶った妻へと引き渡されるものとする。」

「貴方が貴方の母、貴方の娘、貴方の父の姉妹あるいは貴方の母の姉妹、貴方の兄弟の娘、あるいは貴方の姉妹の娘、貴方の父の母あるいは貴方の母の母、貴方の妻の母あるいは、貴方の息子の妻と性交する事は、彼らが血族であれ法的な身内であれ、非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、貴方は野蛮人たちの慣習に従って水死するものとする。」

「男性が女性の衣服を着たり、女性が男性の衣服を着る事は、彼らが自分の性質を公言するのでない限り、非合法である。もしその禁じられた事が行われるのであるならば、男性は左頬を熱した鉄で焼かれるものとする。女性は熱した鉄を触れられないものとし、それ故に空火(skyfire)で焼かれるものとする。全ての男性は熱した鉄で焼かれるものとする。」

「男性は水または炎によって処刑され、そして女性は水または窒息によって処刑する事が出来る。女性については流血するような折檻を受けないものとする。男性が去勢される時、それは石のナイフによって為されるものとする。」

「男性は全ての男性たちが見ることが出来る場所で罰せられるものとする。しかし、女性は、男性の手によって罰を受けることがあるとしても、男性たちの目から離れて罰を受けるものとする。女性の刑罰は、評議会の二人の男性と彼女が悪事を働いた世帯の二人の女性によって立ち会われるものとする。」

「焼き付けにより罰せられる男性は正午に刑を受け、どちらがより彼の苦痛を和らげるかに応じて仰向けまたは腹ばいで寝かされるものとする。彼のそれぞれの四肢は引き延ばされて支柱に結び付けられ、そして彼は真夜中まで放置された後に解放される。女性は、罰を受けると、座る高さまである立てた棒のある部屋に配置され、正午から真夜中までそこに放置されるものとする。刑罰を受ける男女は誰でも、刑罰を果たされた後、彼らが解放されるまで、一人の従者を従える事が許されるものとする。如何なる者も、他の者が彼の友人の世話をする事を拒絶してはならない。」

「もし女性が、その行為によって男性が罰せられるであろう事を何か行うのであるならば、焼き付けの刑が空火である事を除いて同様な刑罰を受けるものとする。評議会は彼女の世帯の主のための適切な刑罰を見逃す事は無いものとする。」

「もしある者が訴訟によって負債を背負い、自分について要求されている全ての負債をその季に支払う事が出来ないのであるならば、彼と彼の所有物は差し押さえられて彼が負債を負う者たちの管理下へと引渡されるものとする。」

「夫により評議会の面前で妻として不適切であると宣言され、かつ評議会がその通りだと認めた女性は、彼の世帯内で彼の妻としてではなく留まる事が認められる。あるいは彼女は自分の出身の世帯または自分の父または兄弟または父の兄弟または母の兄弟の元へ、彼女が望むように戻る事が出来る。しかし、彼女は他のどこにも戻る事は出来ないし、また一度戻る事を選んだ所を再び選ぶ事は出来ない。」

「男性が、自分の世帯内の秩序を維持するために、必要とされる腕力や折檻を使う事は、それが何であっても非合法である。彼はその世帯内でどのような裁定を行う事も出来、そこに満足をもたらすものであるが、全ての事は正義と節制をもって行われなければならない。世帯内でのあらゆる意見の相違はその世帯の主によって判断されるものとする。」

「貴方の世帯内の妻もしくは妹、若年者もしくは子供、または召使もしくはその妻もしくはその息子らもしくはその娘ら、または召使の召使によって、または自由人もしくはその妻もしくはその息子らもしくはその娘ら、または彼の召使もしくは奴隷によって、または奴隷もしくは女農奴もしくは農奴、または彼らの妻もしくは彼らの息子らもしくは彼らの娘らによって、または貴方の家の敷地内の自由人の女によって、もしくは客人によって、もしくは異邦人によって為される事は、その世帯の主によって為されるが如きものであるとし、両者とも同様に刑罰を受けるものとする。ただし、評議会がその世帯の主の全ての行為を斟酌し、その主の刑罰を彼らに従って定めるものとする場合を除く。」

「もし、結婚において、処女として妻に娶った女性が処女でない場合は、その証拠は三人の証人の前で「真実の座」(Seat of Truth)にて提供されることが出来る。その後一人の証人が彼女の世帯へと赴き、その家の主の前でそれを証言する。そして、評議会の面前に問題が寄せられる場合を除いて、その女性は妻たるを棚上げされ、彼女の世帯に戻され、そして彼女の婚資は二倍再要求されることが出来る。あるいは、もし彼女の夫が選ぶのであるならば、彼女は彼の世帯に妻としてまたは妾として残る事が出来るが、彼は彼女の婚資を再要求する事が出来る。」

「もし女性がその夫によって最早彼の妻ではないものとして脇へやられ、かつ彼女が彼の世帯に留まるのであるならば、彼女は妾としてそこに存在するものとする。」

「妾の権利は女農奴のそれと同様であるが、彼女は死ぬまでその主に対して女農奴である。」

「世帯の主が死ぬ時には、その最年長の息子がその世帯の主となるものとし、(元の)主の息子がいなくなるまで(最年長の息子の)兄弟が(年の順に)兄弟の後順位となるものとする。それから、(元の)主の兄弟たちやその息子らが、彼らの血縁関係に従って、その年齢の順序で後を引き継ぐものとする。新しい主は彼の父の妻たちや妾たちを以前と同様に養うものとする。彼(新しい主)の兄弟や姉妹は息子たちや娘たちのようになるものとする。世帯内において、その主の死は主以外の何をも変えることが無い。主の死後、その世帯は、一年間その座にあった後に新しい主によって合法的に為される場合を除いて、分割することは出来ない。」

「寺院の市場の門に立つすべての者は、時間ごとに布告されるものとし、そして布告者の声の元、全ての人々は交易を止めて静まるものとする。」

「子供は、「炎の子ら」(Sons of Fire)の慣習に従って家や世帯の養子とされることが出来、その子は我らの内の一人か、海外から来た野蛮人か、我々の国境の外部から来た野蛮人とする事が出来る。しかし、もし我々の国境の外部から来た野蛮人の子であるならば、男であるならば七年間の捨て子でない限り、また女であるならば女児でない限り、養子としてはならない。」

「もしある者が野蛮人の女を妻に娶り、我々の間から彼女よりも位の高い他の妻を持たないのであるならば、彼は世帯の主となってはならず、そしてより若い息子が彼の後を継ぐものとする。」

「自らを布告した女性的な流儀を有する男は、我々の前では女としての立場にあり、そのように取り扱われる。ただし、もし彼が戦争において武器を帯びるのであるならば、彼が別な風に扱われる事を望むのでない限り、彼は我々の前で男としての立場にあるものとする。」

「もし世帯の主が、その世帯内に処女ではなくかつ妾または奴隷である女を有し、そして彼が客人あるいは世帯内の他の者に彼女を与えて、その者が彼女にぞっこんとなるのであるならば、その主は何の過ちをも犯している事にはならない。」

「もし男が女性的な流儀の男であると布告されるのであるならば、統治者による手筈が整えられる事が出来、対価が支払われて彼の注9保護者となることが出来る。彼はその後その対価を支払った男の世帯に入るものとする。」

「奴隷や農奴は貴方の世帯のどの女性の為にも買うことが出来る。しかし、もし彼女が自由人の女であるならば、その奴隷は自由の身にされるものとし、そして農奴の場合はその負債が支払われて彼を自由の身とするものとする。」

「もし女が妾であり、そして彼女の処女喪失後五年以内に子供が生まれず、あるいは子連れで貴方の世帯に入るのでない場合は、彼女は「炎の子ら」の慣習に従って他の者の世帯に移るものとし、そして同慣習に従って(元の世帯に)戻るものとする。」

「異邦人の布告の間、彼の功績が、良きも悪きも、知らされるものとする。彼に関するあらゆる事が、宣告者の声を聞くすべての者たちに告げられるものとする。人は誰でもその異邦人にそのようなことどもに関して質問をすることが出来、そしてもし何か隠し事があったり嘘を話すのであるならば、その異邦人は評議会によって法律に基づいて対処されるものとする。」

「処女は焼いてはならない。が、棒で打擲されることとし、評議会がむち跡の数を定めるものとする。」

「三度裁判によって罰せられた男は、彼が戦争における武器の担い手でない限り、四度目の罰の後に我々の間から追放されるものとする。」

「記録や書き物、名前の記号(namemarks)や意味の記号は、評議会や統治者の許可によってのみ破棄したり、変更したりすることが出来るものとする。」

「盗賊たちの仲間である男は、彼自身が内心は盗賊なのであり、そして彼の仲間たちが盗みを働くのであるならば、裁判へと引き出すことが出来る。」

「もし世帯の正当な権利を有する主が成人に満たない年齢であるならば、評議会はその世帯と跡取りのための家令と後見人を指定するものとする。」

「異邦人は金属製の戦争の武器を携えて我々の国境内に立ち入ってはならない。しかし、我々の国境の周囲の野蛮人たちの首長たちは武器を携えて来ても良い。」

評議会と統治者と人々の間の法令がある。人と人の間に関するものは、市場の法廷の管轄となる。寺院の法廷と人との間に関するものが他にある。

これらの法令を定めあげたものはホスキアであり、ラコブ(Racob)がそれらを記録した。私、グルワのブリガダン(Brigadan of the Gulwa)はそれらを保存したのだが、その多くが行方知れずである。それらはホスキアの法令である。

次の文はその原文から誤って配置された。「焼き印の為の鉄は赤熱した状態とすべきではないし、また目つぶしは金属との接触によって為されるべきではなく熱だけを通じて為されるべきであり、それは無制限な訳でもない事が定められた。」


脚注

注1:原語は"skyfire"。それが何を指すのか正確な意味は不明であるが、ここでは空火と訳出しておいた。恐らく炎が直接当たらないように「あぶる」ような刑なのであろう。

注2:原語は"bumt"。これは文脈からして明らかに"burnt"の誤植であろう。

注3:原文は"and she be a free worn an"。文脈からしてこれは、"and she be a free woman"の誤りであろう。

注4:原文は"after the custom of die barbarians"。文脈からして、"die"は恐らく"the"の誤植であろう。

注5:ここに原語となる「接続詞」"than"が入るが、当然"then"の誤りであろう。

注6:原語は"secredy"。前の文章との釣り合いからこれは"secretly"の誤植であろう。

注7:原文では"to he so that..."とあるが、"to be so that..."の誤植であろう。

注8:この言葉は訳出できない。文脈からして、何か折檻用の道具であろうと思われる。

注9:原語は"bis"。これは"his"の誤りであろう。

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