第十四章 記録の巻物 その八

(これはもともと完全に書き写されていたのだが、多数の書かれたページが失われている。)

「カベル カイ」(Kabel Kai)の妹は「ソサスの家」(House of Sothus)にて生まれ、そして彼女の名前は「アマラヒティ」(Amarahiti)であった。四人の子供たちがいて、そしてその一人がまだ我々の間に残っている。アマラヒティは可愛らしい顔つきの女性であったと言われている。

街が建設されている頃、野蛮人たちがやって来て我々の間を自由に行き交っていた。多数の野蛮人たちがやってきたが、離れていて遠くから様子を見ていた。というのも、彼らは我々のやり方を理解していなかったからである。やってきた野蛮人たちの間には「クルス」(Cluth)、「クラダ」(Cladda)の息子にして「クラドウィジェン」(Cladwigen)の兄弟がいて、彼はアマラヒティがまだその父の世帯にいた頃に彼女に話しかけた。当時、彼女は未だにその場所に残っている「会話の岩の場」(Place of the Talking Stone)に座っていた。というのも、彼女は野蛮人たちの言葉を知ろうとする者たちの一人であったからである。

実りの季節に、クラダの正妻は、彼女ら自身の種族の如何なる者も、そのような事に通暁していた賢人や僧侶たちでさえ治すことが出来ない病に打ち負かされていた。それ故に、クルスは、その薬草に関する技術で遠方まで知られていた「ラマーナ」(Ramana)、アマラヒティの母の元へやって来た。アマラヒティはクルスと共に来て、彼女は彼の為に通訳した。ラマーナが彼が入用な事を知ると、彼女とアマラヒティは彼について行き、二人の武装した男たちと野蛮人の男たちに話をした。クラドウィジェンの加護が彼らの前にあった。彼らは、二日目の夕刻にクラダの正妻が横たわっている場所へと辿り着いた。賢人たちや僧侶たちは人々に混じって出向き、その女についてブツブツ言い、ラマーナに暗澹たる視線を投げかけた。

アマラヒティの母は、灰でその病気の女を洗い清め、薬草と河岸のトネリコの苦い樹皮の混合物を作った。彼女はクラダの正妻の横に座り、そして朝になるとその病気の体は最早熱が無くなり、体がそれ自体を消耗させる事もなくなった。野蛮人らの僧侶たちがこれを聞くと、彼らは、それは善の事ではなく、邪悪な技によってもたらされたものである何物かであると断言した。僧侶たちは人々に、彼らの間に悪魔が放たれたと告げ、その痕跡の蒸気が小屋の間を行き交っているのを彼らは見たと言った。日が沈んで、その夜、野蛮人たちの間で大きな叫び声が上がった。というのも、多数の者たちが衰弱と嘔吐に見舞われたからである。が、これは僧侶たちによってもたらされたものであり、悪魔によるものではなかった。

野蛮人たちの間で、僧侶たちは高い尊敬を受けているので、クラダの正妻は彼らを宥めようとした。彼女は僧侶の最も位の高い者を彼女の元へ呼び、悪が離れて人々に平安をもたらすには何をなすべきかと尋ねた。その僧侶は彼女にもし二人の外国の女たちを追っ払うならば、彼らの悪と悪魔は彼らと共に出ていくであろうと告げた。彼はまた彼女に、彼女自身の人々に自分たち自身のやり方で彼女の処置をさせてくれと頼んだ。彼は彼女に、他の種族で病気を治すやり方は、自分たちの種族の病気を治す事は無いと言った。クラダの正妻は、争いを避けようとし、また既に半分治っているので、彼の望むようになされるであろうと言った。

それで、アマラヒティと彼女の母は、彼らに随行したその使用人や武装した男たちと共に出発した。彼らが去った夜、クラダの正妻は、嘔吐が喉でつかえて死んだ。すると、僧侶たちは野蛮人たちの間に彼らの声を響かせて、彼らに彼らの間に残っている悪魔の仕業を見よと告げた。僧侶たちは、悪魔はまだ発っていないと言い、それが宥められるまで離れる事は無いと言った。彼らがそんな具合に話したので、野蛮人の男たちは急いで出発して、武装した男たちと共に宿営地を出発する準備をしていたその女とクルスの元へやって来た。やってきた者たちによってもたらされた僧侶たちの言葉を聞くと、クルスは狼狽して何をすべきか分からなかった。やってきた者たちの中に一人の男がいて、クルスに沢山の言葉を話しかけたので、彼は我々の女たちに対して扇動された。というのも、クルスは野蛮人であり、彼らのやり方が彼のやり方でもあったのである。

(ここに、約350語が欠損している。)

続き:アマラヒティは彼女の顔をクルスに向けて、力だけに頼って彼が彼女をこの離れた場所とその拠点に連れてきたのだと言った。彼の強情さのおかげて彼女の人々は死に、彼女の母は傷つけられたとも言った。彼女は、野蛮人たちの慣習に従って僧侶たちが彼女の処女の犠牲を要求したとしても、彼女は既に彼女自身の種族の一人の男に対して尊重されており、品位を貶められるよりもむしろ死を選ぶと言った。彼女は彼に、何が彼の楽しみであるのか、またそれはいずれにせよ喜んで楽しませようとする褒賞として与えられる一人の女性によって与えられる喜びよりもずっと小さなものではないかと言った。女性が本当に与えることが出来る喜びに対して、何と小さな喜びであることか。(不明瞭。そして数行が欠落) クルスは彼の腕を(一部欠落)離れて立った。僧侶たちは檻を用意してアマラヒティは取り出されて(いくつかの言葉が欠落)厳かな上品さをもって傍に立った。彼女の母はその姿の前に(大部分がここで失われている)離れて座った。

再び続く:離れた場所でクルスは木の幹の上に横たわっていたが、彼らが彼女を彼の元へ引き連れてくると、彼は起き上がった。彼は立っているのがやっとであった。というのも、彼は流血し弱っていたからである。アマラヒティは彼に、愚か者とはいえ、貴方より勇敢な男を見た女はいなかったと言った。水辺を下った辺りに、縄縛りの構造を切断したカベル カイと男たちが彼の傷を洗っていた。

その予兆を読み取り人々を分裂させたその老人は、近くにいる者たちに命令してクルスを河岸へと運ばせた。彼らが近づくと、カベル カイは森の茂みの中へと姿を消した。「ケルキリス」(Kelkilith)の男たちはもう一方の岸に残った。

彼らはその壊滅した場所と、彼らの背後で死んで埋葬された者たちを離れ、そしてアマラヒティはクラドウィジェンの僧侶たちの管理の元に留まった。このようにして、彼らはクラドウィジェンとその戦士たちが敵と迎合する為に参集している場所へとやってきた。彼らは喜んで受け入れられたが、その狡猾さが勝利を獲得するカベル カイにとっての悲しい事があった。彼らは、カベル カイが「ウィクタス」(Wictas)の手中にあったのではないかと、彼の事を案じていた。

クルスはウィクタスとの戦いで殺され、川の交わる場にいた「幅広ナイフの男たち」(Men of Broad Knives)はすぐに野蛮人「クルスラドゥロドウィン」(Cluthradrodwin)によって呼び出された。カベル カイは非常に傷を負っていたにも関わらず、連れていかれなかった。彼の顔は、引きちぎられた肉がブラブラとぶら下がるようになった釘打ちの棍棒の殴打によって引き裂かれた。彼は苦痛で顔をゆがめた。というのも、彼の肩は丸太が彼の上に向かってきた時に壊れたからである。それで彼は森の中で隠れたままでいて、獣たちの仲間となった。というのも、彼の見た目は人をぞっとさせるからである。

その年の秋になって木々の葉が落ちる頃、彼は街の近く、アマラヒティが座っている事を常とした境界の近く、流れる小川の傍へとやって来た。冬になると、彼は獣皮で身を覆い、殆ど動かなかった。

野蛮人たちの冬至の饗宴の時、街の人々は、森の前にある街の向こうの共有地で彼らと会った。炎が照らされ、ご馳走を食べ、飲めや歌えやの大騒ぎがあった。街の人々と野蛮人たちの間で贈り物が交換された。そこには(部分的欠落)姿があった。

アマラヒティはこの為に悲しみ、そして小川の傍の茂みの中へと引っ込んだ。彼女と共に二匹の猟犬があった。猟犬はカベル カイを嗅ぎ付けた。というのも、その饗宴の場の温かさと陽気さに引き寄せられて、彼が近くへとやってきたからであった。二匹の猟犬はカベル カイに嬉しそうに飛びついた。というのも、猟犬たちはカベル カイを知っているからである。カベル カイは森へと逃げ帰ろうとしたが、アマラヒティは手を掴んで彼を捕らえた。彼女は彼を見、涙を流しながら彼の首に顔を伏した。彼女はそのウサギの毛皮の外套で彼を覆い、彼女の二人の付き人がやってきた時、彼らはカベル カイを小川近くの隠れ場へと行かせた。(およそ五つの段落が欠落している。)

続く:彼らの間で最も薬草の技術が優れていた。その年の春、彼らは夫と妻として戻り、大祝宴で歓迎を受けた。彼らはカベル カイの家の中で再度結婚した。

クルスの要塞はカベル カイによって、その約束に従って再び築き上げられ、そしてこの時代、クルスの息子らがそこに住んだ。その要塞は水辺から盛り上がり高く隆起した地に建ち、丸太の高い壁で囲まれていた。

その街は二つの木製の壁の間に土を挟み込んだ壁を持つように建設されて仕上げられた。人々は布地や陶器、金属製品や殻や玉を持って船でやって来た。野蛮人たちは緋色に染められた布地に沢山の支払いをした。というのも、彼らの樹木の青は布地にしっかりと染み込まないからである。緋色の布地は、白魚が太陽の熱で緋色になる「炎の子ら」(The Sons of Fire)の地以外どこでも作られていない。人々は、緋色の布地をもたらした者たちは次のようにそれを発見したと断言していると言っている。「一人の男が彼の猟犬と共に狩りに出て、彼らが河岸に沿って歩いている間に、犬が魚を捕まえて口に咥えてその主の元へと運んで来た。その男は犬の口に緋色のシミがあるのに気づき、亜麻布の一片でそれを拭き取った。その色がその布切れから落ちなくなると、それは、その緋色を作り出した物を探求していた染色家の元へと持っていかれた。

寺院が街の中に建築され、そして丸太の上に載せられた。その傍には、「教育の場」(Place of Instruction)があり、そしてそのちょうど前面に「交易の場」(Place of Exchanging)があった。その寺院は今日聖地として建っており、そして光を求める人々のための中心地となっている。その寺院の管理の元、「書かれた言葉の子ら」(Children of the Written Word)であった「光の子ら」(Children of Light)の記録が保管されていた。

しかし、その街の人の心と霊にとって全てが良いわけではない。街はそれを用いて建築された木材や石材によって生きる訳ではない。それ故に、「バーヘドホイのサモン」(Samon of the Barhedhoy)と「アメス」(Ameth)に従った者たちがやって来た時から、「光の子ら」の中心である我々は自分たちの出立を準備した。(何語か欠落。)我々が自分たちだけで住むことが出来る、それ程遠く離れていない「グレイス」(Glaith)の海の傍に。

我々は寺院でそれを保護する者たちに最初の本を残した。が、我々は、我々と共に持参するように他の本を作った。もう一つの地で、我々はそれを腐朽させないようにする、(断片が欠落。)我々はこれを貴方がたに残そう。我々もまたそれを共に持参し、それが失われないようにするから。名前が書き込まれ、そして封印が施される。

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