第十二章 記録の巻物 その六(不完全にして断片的)

我々が「ドロイデッシュ」(Droidesh)を発つ前、彼らは生きている羊とヤギを連れてきて集会の場に立つ木に吊るした。鮮やかな色の鳥と金銀の細工物が枝に吊るされた。衣服に加えて香水とオイル。彼らはその木の周囲で踊り、切り刻まれた木材が持ち込まれてそこに立て掛けられた。三人の乙女が進み出て、その木に火がつけられて成功への捧げものとして燃やされた。

我々は北方へ向かい、そして数多くの船が停まっている船着場へとやってきて、我々が今まで見たこともないような武装した男たちが大声で言い争っていた。

我々は引き上げた。というのも、彼らは我々にとって異国の者たちであったから。しかし、他の者たちが背後にやってきて、我々は彼らの間に取り込まれ、「アルバニック」(Albanik)、「武装した男たちの指導者」(Leader of Armed Men)の面前に連れ出された。彼らは我々の周囲で手荒に扱い、ある者は流血して叫んだ。彼らは我々の船や所有物を奪取しようとしたが、その指導者は言った。「この件は朝まで放っておけ。というのも、もしその外人たちの血が今流れ出るならば、それは止むことが無いであろうから。」

「その夜、アルバニックの妻は彼に話しかけて言った。「あの異邦人たちを殺すのは愚かな事で悪い行いでありましょう。というのも、彼らには知恵があり、学識のある者たちだからです。何故貴方が良い目的の為に使えるかもしれない何かを台無しにすることがありましょうか?」

その指導者は妻の助言に耳を傾けた。というのも、彼はたくさんの傷ついた者たちがいたことを理解していたし、そして彼らの世話をするのに我々以上に技能に習熟した者たちはいなかったからである。彼女は身ごもっていたので、我々の命は容赦され、そして持ち物は我々に返還された。

その隊長たちの間の指揮者は戦士であり、狩猟時に自分自身の父を殺して自分自身の国から逃れなければならなかった。彼とともに、狡猾でずるい方法でとらえた女王を連れていたが、我々は彼を恐れることはなかった。というのも、アルバニックは好意的な目で我々を見ていたからである。

我々と共に来た戦士たちの内に、「イロピノス」(Ilopinos)から来た400人の男たちがあった。彼らは緋色と紫の羽毛をまとった青銅の兜をかぶっていた。盾は磨かれた青銅製なので太陽の如く輝き、そして硬質化された金属の帯で縁取られていた。長さは、2キュービット(cubits)半で、幅は1キュービット半であった。その戦士たちは長さ6キュービットの節無しの木で出来た槍を装備しており、その槍は受け口にセットされた硬質金属製の刃を有していた。

戦士たちの剣は奇妙な方法で加工された純粋な硬質金属製で、その長さは1キュービット半、その幅は指三本の広さであった。その剣は角の柄となっていて、銅と銀の線で留められていた。戦士たちの内のある者たちは、戦闘用投げ槍と投げ矢で武装していた。彼らは飛ぶときにそれ自体が回転する奇妙な投げ矢を持っており、他のものでは横から急に割り込んでくるものもあった。

戦においては、戦士たちは敵の突進に耐える為に3人の後ろに更に3人で陣を組むのだが、彼らは攻撃に弱かった。というのも、彼らの動きは鈍重であったからである。戦士らと共に、奴隷や戦場の略奪者、その土地の略奪者、料理人、荷物の番人、重荷の運搬人であった120人の随行者があった。戦士たちは戦の職人であった。

七日の間、全ての船が共に航海し、そして七日で海のそばのある土地に辿り着いた。そこは全てが荒廃した死の土地であった。海に隣接したその地の中心には崩れ落ちている寺院が立っていた。というのも、そこにはそれを維持する人たちが居なかったからである。彼らの中の首領や上官たちはその寺院へと詣で、彼らがその声を聴きたいと願う彼らの神々への犠牲を捧げた。

甲冑職人「ラベン」(Laben)の娘が炎の前の開口部へと身を隠し、一風変わった語り方で彼らに話しかけた。彼らは彼女の話を聞き、それが影の神から来たものと思った。彼女は、「ベルハリア」(Belharia)と呼ばれた自分の母の国について語り、彼らにそこへ行く道を見つけるよう命じた。彼女は彼らに「ベセダン」(Bethedan)の民を彼らと共に連れていくよう告げた。というのも、彼らは幸運をもたらし、神々たちに愛されていたからである。

首領たちは、将来展望を与えられたと信じ込み、その寺院から退去した。

我々は大集団で西へ向かって出かけていき、渦巻き以外に恐れるものは何もなかった。というのも、我々と共にある「赤い男たち」(Red Men)が海路を知っていたからである。何日もの長い間、我々は海だけを見たが、ついに陸地を見つける鳥たちがすっかりと戻ってきた。

我々は海の口を通って「大河」(Great River)の海へと出向いた。白銅の地を過ぎて「肌に彩色した男たちの地」(Place of Painted Men)へと達し、そこで我々は船を泊めて錨を下した。

戦士たちの内のある者らは「スパルシア」(Sparsia)から来ており、その首領は斧男とよばれる「コリン」(Korin)であったが、我々はその男を「狡猾なる者」(the cunning one)と呼んでいた。これらの者たちが狩りをする為に森へと出掛け、そしてその地の王が人を遣わして彼らを連れて来させようとしたのだが、彼らは同行することを拒否し、大声の言い争いが起こった。

その「肌に彩色した男たち」の首領の護衛たちは弓の射手であり、その一人がコリンをめがけて矢を放った。彼は脇へと向きを変えて自分の盾の後ろへと隠れ、その矢は彼に向って剣を構えていた一人の「肌に彩色した男」の喉へと進路を変えた。これが森の一団と海の一団の間で大乱闘を始めさせ、多数の敵に囲まれていたとはいえ、コリンは彼らの間を縫って戦った。その一戦は彼のものであった。何故ならば、彼は森を突き抜けて前進して「肌に彩色した男たち」の家々を襲撃したからである。

船は二手に分かれ、「鷲と蛇」(eagle and serpent)の設立を望む者たちはベルハリアにある「巨人の港」(Harbour of Giants)へと向かった。その同じ巨人たちは巨大寺院の建設者であり、そして彼らは6キュービットの高さであった。

コリンの船は我々と共に滞在し、そして彼は巨人たちをその洞窟から狩り出して彼らを全て殺し、一人の巨人女を救助した。彼女は我々の元にやってきて、アルバニックの妻の命の抵当として拘束された。

我々はある湾にやってきたが、その一方の面は森となっていて、もう一方の面は獣群が牧草を食む平野となっていた。その地の人々にとって、その時分は炎の饗宴の時であり、彼らは海岸で遊戯を催しており、その背後の開けた土地で競走をしていた。この時期においては、彼らは戦うことはしようとせず、それで我々は彼らと平和的に会った。彼らは二つの部分に織られた衣服を着用し、獣の皮のベルトを着用していた。彼らは皮革の帽子をかぶり、そして彼らの周囲にぶら下がるチュニックは暗青色、暗緑色、そして暗褐色であった。彼らは自分たちの足や脚を前面でまとめて縛った化粧仕上げの獣皮で覆っていた。彼らは数多の銅の装飾を身にまとっていたが、彼らの腕章やブローチが銀の如く輝いていたにも関わらず、ほとんど金や銀はなかった。彼らは銀や金のように銅を加工する技術を有していた。

これらの人々は、彼らの神「マゴ」(Mago)が現れる時、熱狂の始まりの前の大饗宴を催していた。その神の中には、その神が食べた人々の霊が宿っていて、彼らの声は、闇からの救出を要請することにより聞くことが出来た。その饗宴の為、これらの人々は巨人女を要求し、そして彼女は饗宴の間にわたって彼らに引き渡された。

我々はこれらの人々のやり方を知らず、彼らが我々に血を飲むよう求めてくるのを見た時、我々は彼らから遠ざかった。酋長は使者を我々とコリンに送ってきて、その巨人女も一緒にやってきて戦ったのだが、その巨人女はより強かったので、コリンは彼女を絶壁の端へとおびき寄せた。コリンは彼女を嘲弄し、彼女のぎこちなさを嘲笑し、そしてその後その崖の裂け目で彼女をかついで前方に突進するようにさせた。彼女がコリンの傍を通過する時、彼はその巨人女の背後に回って彼女を押し、彼女がその崖の端を落ちて下にある巨大な黒い岩に落ちるようにした。その巨人女の背中は砕けた。その同じ黒い岩は後に分割されて、引き上げられて崇拝されるようになった。

我々が来た場所では、不死の星が空高く浮かんでいる。手斧は朝には休んでおり、そして空の門の見張人は宵に東方の若木に座している。ハヤブサは滅多にはっきりと見えることは無い。この地は「ダダの国」(Land of Dada)である。

我々は彼らに警告したが、彼らは聞こうとしなかった。彼らはその戦争の前に断食にあって、それは供え物の肉を食する前の聖なる断食であった。我々は彼らの家々の床下に塩を埋めて、そこに再び誰も住む事が無いようにした。角笛が聞こえてきた時、警報と危険が脅かし、これらの抜け目のない商人たちは我々の元へ走ってやってきた。彼らの顔は恐怖の汗でびっしょりであり、彼らの唇は震えていた。危機が去った時、彼らは胸を張って出てきて、口々に自分たちの行為を得意げに話した。彼らは略奪の分け前を求めて困難を排して突き進んだ最初の者たちであった。

コリンは彼らと会うために去った。彼は二隻の船を引き連れていったが、彼の子供たちの元へ戻ることは無かった。その指導者は夢中になってしまったのかもしれない。しかし、彼についていった者たちの中で最も地位の低い者たちは、決してくじけることのない意思を持っている。今や人々が望んで不可能な事について言及する時には、「コリンはどこにいる?」と彼らは言う。

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