第九章 聖なる記録 第九部

これは「二度生まれし者」(Twice Born)の神秘に関することである。それは再び生まれた者たち、多くの者たちが生き延びることが無い仮死の恐ろしさを耐え抜いた者たち、「コリラドウェン」(Koriladwen)(の椀)注1で霊に関係する口当たりが良く苦みのある配合物を深く飲んだ者たち、轟くような音をたてる扉を通じて「オゴフノーム」(Ogofnaum)へと入った者たちに関係する。彼らの辿る道は以下の如きである。

「天」(Heaven)の扉は少し開いていて、幻視の扉は開き、そして今や、「幻視の洞窟」(Cavern of Vision)が明らかにされる。深淵からの霊を纏う波が解き放たれ、「偉大なる光」(Great light)の光線が解き放たれ、そして「不変なる者」(Constant One)によって「案内者たち」(Guides)や「監視者たち」(Watchers)がその持ち場に配置された。

「歓迎者たち」(Welcomers)は引き下がっている。というのも、ここは彼らの舞台では無いからである。「光り輝く者」(The Brilliant One)ともう一人「詠唱者」(Reciter)がそこに居て、彼が幻視について説明する。「おお、勇敢で豪胆なる者よ、将来の「ショルタッシュ」(Syoltash)よ、貴方が見る物事は、「偉大なる者たち」(Great Ones)が自分たちの時にこの道をやって来て生き返った時に彼らが見た物事と同じものである。彼らは本当に知恵の人々であり、密儀的手順に精通しており、自分たちの立ち位置と本分を心得ている人たちである。」

「その双星を見よ。これらは「二度生まれし者」(Twice Born)をその起源の場所へと引き寄せる有効な助力となる力を体現している。それらと共に在る者たちは、光や暗黒の戦士である。貴方のお供として一つを選択しなければならない。が、その選択は親和性の法則に従ってなされなければならない。さもなくば、貴方は二度と戻ることがないであろう。」

「貴方が見つめているよどみは地上の生命である。上方の燦爛たる光は、太陽よりもずっと強力であるが、「一つなる神」(The One God)の顕現であるが、それは「神」(God)ではない。その周囲で揺れる光線は神々(gods)であり、存在する物事の歪められた反映であり、「真実」(Truth)の歪められた反映であり、実在の影である。閃光を発する微片は魂であり、それらは光から降りて来て、暗闇の中で顕現する。」

「より劣った光を覆う雲は誤解の雲であり、知恵の顔つきを暗くするものである。柱の傍に立つ暗黒の双子は「惑わし」(Delusion)と「幻影」(Illusion)であり、絶えず人々を欺くものである。澄んだ水の流れは「真実」(Truth)であり、「真実」の流れは土の台座である虚偽を常に避けているのである。」

「貴方の前、右手に見える輝きは、孤立してそれ自体を見せている素の霊である。それは死すべき定めたる肉体の中にも、コハール(Kohar)の中にもない。その向こうには、遠方より反映されるずっと強力な輝きがあるが、それは「コハールたち」(Kohars)の「コハール」(Kohar)であり、人間たちはまだそれについて理解することが出来ない。」

「貴方の左手の炎の背後にあるむかつくような形どもは、かつて人間たちの中で活気を添える力であった絶望的な霊どもである。今や彼らはヘドロや汚物の中を這いずり回り、ぬかるみの住人達であるが、彼らの運命は正当である。というのも、彼らは自分自身で判断したからである。陰鬱さの向こうの暗黒はより大きくなることは無いであろう。暗黒は光へと転化することは出来ない。というのも、光が暗黒の中に差し込むと、暗黒そのものが無くなり、暗黒は存在することを止めるのである。」

「貴方が見た陰鬱さと影の情景は、貴方の左手前方にあるものは「重苦しい領域」(Region of Heaviness)であり、人間たちが一時逗留する場所である。ここかしこに明滅する光は「地上」(Earth)の喜びであり、他方、より暗い箇所は悲しみや苦しみが存在する場所である。赤い色は怒りや争いである。青白色は愛や思いやりである。」

「前方上部の輝きは「光の領域」(Region of Light)であり、そこは「立ち上がりし者たち」(Risen Ones)が喜ぶ場所である。というのも、そこで彼らはその「地上」(Earth)の仲間たちを歓迎するのであり、再会の内に幸せとなるのである。見よ、ここに「立ち上がりし者」が新たに到着する。見よ、彼女は幅広い霊の翼に乗って上方に飛んで行き、情愛のある腕が伸びて来て彼女を歓迎している。貴方が目にし、その目前に現れている星を纏った道路は、以前ここを通った無数の「立ち上がりし者たち」が歩い道である。さて、左手に向かって進みなさい。」

「今貴方の前にある深淵は、「地上」(Earth)の口である。そして見よ、それは口開き貴方に話しかけ、別れの挨拶をしている。注意深く聞くが良い。というのも、それは貴方の行い、成果そして遺漏した物事を再び語っているのである。もしそれらの事が貴方を悪いように評価するようであるならば、その身をその深淵へと投げ出すが良い。というのも、貴方はこの試練を生き延びるのに相応しくないからだ。これ以上は進まないことだ。貴方は戻ることが出来なくなるし、貴方が「暗黒の悪臭ある潜伏者」(Foul Lurker of Darkness)の餌食となるといけないから。」

「もし貴方がその評価で不足分を見出すことが無いのであるならば、大胆にそして恐れなく前へ進むが良い。というのも、その口は貴方を通すために閉じるからである。もし貴方が勝利を収めたる者たちの間に列せられる事が無いのであるならば、生き延びて「非常に恐ろしい潜伏者」(Dread Lurker)や「貪り食らう恐怖」(Devouring Horror)と遭遇し、白痴で空っぽの抜け殻となって地上へ戻るよりも、直ちにその口へ飲み込まれてしまう方がずっとよろしいであろう。」

「その深淵の向こうには、「知恵の淵」(Pool of Wisdom)と「浄化の淵」(Pool of Purification)を含む一続きの青い水流が伸びている。そこで貴方は沐浴し、貴方自身を水で洗わなければならない。貴方の右手に生育する木々は霊的食物の果実が実っているので、それを食べて強くなりなさい。そうすることにより、地上(Earth)で為され、考えられ、そして視覚化された物事は、ここでは霊的な姿の物事や経験へと変質する性質となることを知りなさい。」

「その流れと木々の間を通っていくと、貴方は「夜空の雄牛」(Bull of the Nightsky)の皮から作られた多数の革で縛られた横木から成る梯子がかけられている崖と出会うであろう。貴方の前に屹立するこの梯子は「経験の梯子」(Ladder of Experience)である。その二本の支柱は肉体的経験と霊的経験である。横木は貴方の地上生活における日常的な行い、思考そしてとりとめもない想像である。今が試練の時である。貴方の日常的な行いや内緒の考えが貴方の梯子登りを支えるであろうか?あるいは、上方へ行く貴方を支えることに失敗するであろうか?見るが良い。上の方に貴方のコハールが在る。それを呼んで助力を得るが良い。というのも、その中に貴方は霊的強さの蓄えを保持しておくことが出来るからである。あるいは、ひょっとすると、その内容が貧弱で空っぽであるかもしれない。それは貴方だけが知っているのである。この梯子を支えるのは「梯子の主たち」(Lords of Ladder)であり、彼らは貴方を「登る者」(Ascending One)として歓迎するのである。」

「その梯子は台地へと通じており、貴方の傍に奇妙に装った詠唱者(Reciter)が現れて両腕を振り回しながら言う、「物が表れたところの全ては蒼穹であり、それは原初の前にあったし、今も存在する。原初において、「神の太陽」(Sun of God)からのたった一筋の光線がその暗黒の中を突き抜けたのだが、後に、最初の霊たちが加わった時、蒼穹は明るくなり、それは重さと明るさによって分割された。その後、蒼穹が離れ離れとなった時、それは暗黒の霊どもの登場によって分割された。彼らには陰鬱な親和性を持つところの場所に対する必要があったからである。」

それ故に、明るい蒼穹は分割され、そこには「勝利を得たる者たち」(Victorious Ones)の為の「光の場」(Place of Light)と、勝利へと上昇することが出来なかった者たちの為の「暗黒の場」(Place of Darkness)が存在する。憂鬱と影の領域があり、黄昏と薄暗がりの領域がある。多彩な光の領域があり、目をくらませる光の領域から朧げな光の領域まで存在する。蒼穹をよぎって帳があり、「天」(Heaven)と「地上」(Earth)を隔離しており、地上を旅立つそれぞれの霊はこの帳を突破し、親和性の風に運ばれてその指定された場所へと行く。そこへ到着すると、その霊は、良きも悪きも、強力となり、そしてその親和的な領域へと広がっていくのである。」

「「コハール」(Kohar)は「知る者」(Knower)であり、霊は知られる者である。全ての知識は「知る者」と共にあるが、知られる者はそれを軽く叩いて、その知識を知られる者へと流れ出させることが出来る。「コハール」は「天」(Heaven)において霊の種を受け取る。というのも、そこでは地上での肉体のようなものであるからである。地上的な肉体が「重苦しい領域」(Region of Heaviness)の物質で出来ているのと同様に、「コハール」は「光の領域」(Region of Light)の素材で出来ているのである。」

これらの事を「詠唱者」(Reciter)は言った後、一匹の蛇が眠る場所へ貴方を導く。そして、その蛇を指しながら言う。「その蛇を見よ。その蛇は人間の体をぶら下げた木、彼の背骨の木の幹で眠っている。その蛇は見張っていて、霊的力の貴重な宝石を保護していて、その宝石は三重の被覆で覆われて見出される。その宝石を得るためには、その蛇を目覚めさせて、打ち勝たなければならない。この蛇を目覚めさせる事は、軽々しく着手出来るような事ではない。というのも、その蛇は心へと乗り掛かる炎を引き起こし、錯覚と狂気によって頭がいかれてしまうからである。「二度生まれし者」(Twice Born)だけがその宝石を実際に入手できるのである。」

貴方は「詠唱者」と共にパスして、彼は言うであろう、「次の事は貴方の心で確立しなければならない事であり、貴方がそれに沿って「西方人たちの地」(Land of the Westerners)へ到達する旅をしなければならない八つの道についての知識である。これらの道は「影の地」(Land of Shadows)へと導く12個の最初の入口へと貴方を導く。ここで私は貴方の為に、貴方が為さなかった22個の邪悪なる行いについて詠唱しよう。そして貴方はまるで自分の時間であるかのように「影の地」を通過して、そしてその向こうに、貴方は「偉大なる入口」(Great Portal)に到達するが、貴方は「偉大なる守護者」(Great Guardian)の前で、12の美徳に従って生きる為に自分の力の内で常に全力を尽くしてきたことが立証されなければならない。そして、貴方はその入口を通り過ぎ、「審判の広間」(Hall of Judgement)へと進む。ここで、初めて貴方の光が現れ、貴方の言葉が貴方の心の中の考えに従って話されていたかどうかが明らかになる。」

「多くの者たちは口から出る言葉を知っているが、その心の中に書かれた事とその言葉が切り離されている者たちである。もし、口から出る言葉が心に書かれた事から複製されたものであり、そしてそれが本当の複製であるならば、貴方の本当の形と外観が全ての者が見ることが出来る様に開示されるであろう「評価の場」(Place of Assessment)へと渡るが良い。」

「暗闇のカーテンが降りて暗い濃霧が立ち籠め、そして「雷鳴の扉」(Thundering Doors)の轟く音響が響く。ずきずきと痛む肉体は石棺の中へと横たわる。その探究する巡礼者は自分の案息所へと戻ったのだ。彼は「地上」では決して学ぶことが出来ない真実を学び、そして今や「大いなる秘密」(Grand Secret)を知っている。信仰は確信へと置き換わり、今、彼は「入門者」(Initiated One)となったのである。」


脚注

注1:"Koriladwen"が具体的に何を意味するのか今となっては不明であるが、drink from ~ のつながりから、それが何らかの(もしかしたら魔力のある)椀のようなものであろうという推測が成り立つ。

Copyright© 2015-2022 栗島隆一 無断複製・転載を禁ず