第五章 聖なる記録 第五部

一対の行路の外側を旅する者たちへの、ケムウェリス(Kemwelith)の道を辿って、閉ざされた墳墓の中に横たわって来た者たちへの教えがある。その言葉は遠い場所からもたらされたものであり、最初にうねる大波の向こうの遠い土地で話されていたことである。

「立ち上がりし者」(The Risen One)は新参者となった。そして、決済所を通過して彼の出立が遅れることはない。渡し舟には何の料金も果たされることがない。というのも、その新参者は、彼の行いに従って自ずと知られるようになった入場の言葉を彼と共に有しているからである。彼は道から逸れることがなく、首尾は順調であった。

清めの曲がりくねった水路である蛇行する川の渡し守が「待機の場」(Place of Waiting)へとやって来る。その新参者は停泊所に立ち高らかに言う。「おお、渡し守よ、遠く、「祝福されし者たちの地区」(Region of the Blessed Ones)へ。私は清められ、堕落させる悪を一掃しました。急がれよ。遅れなさるな。私は自分の目的地へ到着するのが心配なさすらい人なのです。」渡し守は言う。「お前さんはどちらから来なすった?」新参者は言う。「私はレストー(Restaw)からやって来て、疲れ果てているのです。ぐずぐずしないで、私を住むのにふさわしい場所へと連れて行ってください。私は魂の自己(soulselves)と一つになった方々に加わりたいと願うのです。ぐずぐずしないでください。留まらないでください。というのも、私はこの陰鬱な河岸を発つことが出来るか心配なのです。恐れもありません、用心深い方よ。というのも、私の足取りに悪さをする悪は無いからです。さあ、ここを発ちましょう。定められし場所へ、水流の上に私を連れて行ってください。霊たちが再生する場所へ私を迅速に運び、私を再び若返らせてください。私を「神々の場所」(Place of the Immortals)へとのぼる「偉大なる階段」(Great Stairway)のふもとへと、「偉大なる神の中庭」(Courtyard of The Great God)へと運んでください。」

渡し守はためらって言う。「お前さんの合言葉を明らかにしてくれ。お前さんが本当に試験を通過した事を、そしてお前さんの本当の目的地を儂が知る事が出来るように。というのも、人がある事を考えていても、真実は別の場所に存在するという事が、人にとってありがちな事であるからである。」

新参者は言う。「私の合言葉は「輝き」です。貴方がペテン師でなければ、貴方は私の頭上に輝きを見ることが出来るでしょう。そして、私の紹介状は私に関する書物で、それは「神聖なる秘密の書」(Book of Sacred Mysteries)です。さあ、私を水流の上を運んで下さい、私が「平安の野原」(Field of Peace)の地を踏むことが出来る様に。御覧なさい、私には四人の付添人がいて、両側に二人ずついませんか?私の為に彼らに話をさせて下さい。というのも、彼らは真実の光の中を歩んだ証人たちであるからです。」

渡し守は言う。「マストの側には誰が立つのか?」すると「立ち上がりし者」は答える。「私がそのマストの傍に、付添人たちと共に、両側に二人ずつ立ちましょう。貴方は操舵する櫓を持って傍に立って下さい。我々の進路がまっすぐに維持されるように。」渡し守は言う。「それは結構。というのも、流れはゆるやかで変わりやすいからね。」

新参者は言う。「おお、舟を持たぬ渡し守よ、私は本当に、地平線の両側、「天と地」(Heaven and Earth)の全ての者たちの前で正しいとされた者なのです。私は検査官の試験に合格し、そして自由に進むことが出来る。私は、その行いの美徳によって通行を主張することが出来る者なのです。私が人々の間から旅立った後、彼らは私について良い話をしませんでしたか?それで十分ではないですか?人々がそこにいない人の善行について話すならば、その人は実際に良い人であるというのは、地上のやり方なのです。真に、私は「輝く者」(Bright One)なのです。」

渡し守は言う。「お前さんの外套を脇へ寄せ、儂がお前さんの似姿を見れるようにしてくれ。というのも、これは良い舟であり、汚染されることが許されないからだ。ここからの道は、激変に直面することが出来ない者たちには厳しいものとなる。おお、「偉大なる者」(Great One)よ、お前さんの外套を再び脇へ寄せてくれ。というのも、お前さんは本当に、この道を通過する者たちの間では最も輝かしい方であり、お前さんがご自分の性質、心の純粋さの中に現れる時の喜びは大いなるものであろう。」

「遅れないで下さい、渡し守よ。流れの上を素早くあちらの岸まで。もし貴方がこれ以上遅れるのであるならば、その非実在性が暴露されるように、私は人間たちの神々の名前を挙げていこう。私はいい加減な扱いを受けて良い者ではなく、幻想の大群を消散させることが出来る者なのです。私は物惜しみする性質の人間ではない。それ故に、これ以上留まるのではなく、出発しましょう。」

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