第四章 聖なる記録 第四部

かつて在りしその男は最早、地上の人たちと話すことは出来ない。というのも、彼は今や「永遠なる者ら」(The Eternal Ones)に混じって光輝の中に生きているからである。彼は「査定者ら」(Assessors)の前で評価され、そして彼の欠点が少なくないとはいえ、彼は善良さにおいて評価外となることはなかった。彼は「光り輝く者」(Shining One)となって、彼の気の合う仲間らのみを伴って、天上界(Heavenland)の場所へと旅を継続する。

彼は「栄光なる場」(Place of Glory)、「達成の場」(Place of Fulfilment)へと昇華した。非常に長い年月が、脱ぎ捨てられる外套のように彼の肩から外れ落ち、そして彼は再び若者となった。彼は強健で、生き生きとしている。時間は彼に変化を与えることは出来ず、悲しみが彼の心に入り込むこともない。彼は休み、新しい責務に対する使命を待っている。

彼は「広大なる広間」(Wide Hall)を、次いで「狭い正門」(Narrow Portal)を通過した。彼は「新たな夜明けの地」(Land of a New Dawning)へと入って、歓迎を受け、彼の地上の仲間たちが彼に挨拶をし、彼は生き生きとした。彼は害悪を受けることなく、彼のあこがれを満たす崇高なる光景を見る。仕えていた彼には今や仕える者がいる。彼が蒔き栽培して来たので、今、彼はそれを刈り取るのだ。

彼は「待機する魂の場」(Place of Waiting Souls)を越えて進み、そして人間の昇華した霊と結合する予定であるコハール(Kohar)たちが待機しているのを見た。彼はその手に「生命の書」(Book of Life)を携え、穢れのない牧草地の上を滑るように進み、明るい区画する炎を過ぎた。彼は暗黒に向かって憐みの顔を向けるが、赤いギラギラとまぶしい光に衝突する流れ去る影以外何も見えなかった。「堕落したる者ら」(The Lost Ones)は恥じらいの内に委縮し、かつて人間であった者は自分たちの悪臭のある住処への入口を通過していく。

地上に残されて「栄光ある者」(Glorious One)を悼んでいる者たちは、その涙をぬぐい去った。というのも、彼にとって全てが申し分ないからである。彼は栄光の場において、善良なる暮らしを楽しんでいる。彼はそのコハールに抱かれて安全であり、彼は光輝に対して目が開いている「崇敬する者」(Adoring One)であり、彼は荘厳なる光景を目にするのである。

かつて人間であった者は、彼の責務に関して彼を導く啓蒙者を求め、彼は「美の湖」(Lake of Beauty)でその身を洗い清め、「生命の泉」(Fountain of Life)にて元気を回復する。彼が見るのは、その全ての邪悪さを取り除いたが、まだその欲望が「運命の主ら」(Lords of Destinies)に捕らわれている黄昏の霊たちであり、というのも、彼らは今でも試されていないのである。「生命の主」(The Lord of Life)は彼らの足取りを審判と検査へと案内する。そういった事には、常に希望が存在する。

かつて人間であった者は、生命のうねった水路を進んで、死の暗き流れを横切った。そして、今や知恵によって強くなっている。彼は、指導者となり道を案内することが出来るように、高い場所の席を占める。彼は遠くにある火鉢、真実(Truth)を求める者を導く誘導灯となる。彼は清められ、「偉大なる白き外套」(White Mantle of Greatness)を纏って現れる。

見よ、「重い王国」(Heavy Kingdom)において彼の勧告を求める者たちの呼び声を待ちながら座している時の、彼の衣服の輝きと彼の装飾品の純粋さを。暗黒なる水域の預言者たちは人々の見通す力や啓示の明瞭さに驚くであろう。というのも、その力はかつて人であった者から、数倍もの強さで出ていくからである。偉大なる存在が「曙光の地」(Land of Dawnlight)にある「輝かしい一団」(Splendid Company)に加わった。そこでは、人々は言うであろう、「地上は、このような人物を生み出すならば、立派にその目的を果たしている。」と。

貴方は、かつて人間であった者の仕事は何であるか不思議に思うかもしれない。かれは暗黒なる水域だけを啓蒙するのであろうか?彼は、自分の霊の扉を知恵の指導者に対して閉ざす者たちの心へ入り込もうとする者たちの間にいないことがあろうか?ああ、地上的な覆いで厳重に覆い隠されている者たちは常に、知恵の指導者たちの面前で反発して言う。「この戯言について我々は何を為さねばならないであろうか?」しかし、彼らは、いちばん、啓発を必要としている。というのも、彼らは狭量な人間たちであるからである。

彼は、「偉大なる啓蒙者」(The Great Illuminator)の使者として、夜の先導者、闇を貫く案内人、最も暗い時点における夜を照らす星になったといっても差し支えないのではあるまいか?彼は、水面を踊る「光線の導き手」(Director of Rays)、あるいは頬を撫でる「風の管理者」(Controller of Winds)になったと言っても差し支えないのではあるまいか?ともあれ、彼は光輝なる暮らしを楽しんでいるので、全てが知られる完全なる知識の日まで、彼とそのコハールをそのままに留めておこう、と言うにとどめておく。


脚注

注1:原語は"Westerna waters"。"Westerna"はおそらく、"Western"の誤りであろう。「西方の海」と訳した。

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