第三十三章 ヘラカット(Herakat)の巻物

「偉大なる知恵の神」(Great God of Wisdom)よ、それが真の記録となるように、この書き物の転写を助け給え。というのも、私はかつての「ソファー」(Sopher)のように学問において学識がある訳では無く、筆記者としてさえ未熟だからです。

人間は戦いの場であり、彼は二つの奴隷たちの間で闘争の内に引き裂かれます。人間は無知の暗き夜に住んでいるのです。

七つの都市の「ラマクイ」(Ramakui)から、「銅の地」(Land of Copper)から、「光の民族」(People of Light)がやって来て、彼らは彼らの透き通った神殿から、暗黒がやって来る時に灯される事無しに輝く光を彼らと共に持って来た。「年老いた禿げ頭の者」(Old Bald-Headed One)、その名が語られる事は無いのだが、彼によって率いられ、彼らは日の沈む方角の「西方」(West)からやって来た。「西方の」(Western)荒野が草木に覆われていて砂がまだ水に取って代わる事が無かった時に、今や岩や石以外何もない辺境が牛や羊に食べ物を与えて養っていた時に、彼らは今日日が沈む所からやって来た。「ターディニアンたち」(The Tirdinians)は彼らを歓迎しなかったが、彼らは安全に西方の場所を通って「アンシブヤ」(Ansibyah)の地へと通過していき、そして救援と食べ物を受けた。彼らは人々に多くの事をもたらした。というのも、彼らは賢く、学識があったからである。彼らは知恵の人々であった。

「真実」(Truth)は大衆のためにあるのではなく、汚れた手が美しい亜麻布を荒らしてしまう。高貴なる生まれの者たちは自分の財産を持ち、そして身分の卑しい者たちにはその指定された場所がある。「真実」(Truth)は市場で売っているものではなく、金持ちたちだけがそれを得ることが出来る訳では無い。わずかな者たちが偉大なる部屋へと入り、死んだりありは生き抜いたりした。寺院は美しい貝殻であるが、その核心は内部で枯れている。人間たちは生命の食物に欠いているのである。

「真実なる神」(The True God)は防護され、そして偽りの神々たちによって隠されてきた。「彼」(He)は賢者の心の中で話をするが、人々は石の中の声を聞いてきた。彼らの耳は人間たちの声以外の全てのものに対して閉ざされている。昔は全ての神々のための小さな場所があったが、その柱は未だ立っていなかった。石は未だその場所に配置されておらず、そして「隠された秘密の寺院」(House of Hidden Secrets)はまだこの国には存在しなかった。

それから、壮麗な寺院が建設され、そして僧侶たちは大邸宅にて慰められた。大いなる庭や野原が人間たちの神々の所有地であった。彼らは多数の家畜の群れをその牧草地に有していた。崇拝や儀式の中において、小さな神々を祭る華やかさの真っ最中に、「真実なる神」(The True God)の啓示たる「真実」(Truth)の光が輝いていた。それは殆どの者たちに知られることは無く、そして更に少ない者たちがそれを理解していた。

七年の間選ばれし者たちは待ち、そして招集される。七年間彼らは仕え、そして七年間、彼らは「教示の師」(Master of Instruction)の元で仕える。彼らは寒々とした洞窟へと渡されて、死して「神」(God)を知り、そして「真実」(Truth)の確固たる知識を持って呼び戻される。この様にして、人間たちは「一つなる真実の神」(The One True God)のしもべとされたのである。かくして、彼らは、神において我々と共にない多くの読者のために書かれることが不可能な「真実」(Truth)を知るのである。

偽りなく事実を伝える書物があったが、それらはもはや我々と共に無い。「蘇りし者たち」(The Arisen Ones)は所詮小さな神々に過ぎない者たちの秘密を知っている。「大いなる天秤」(The Great Scales)は冥府においては魂をその外観によってその重さを測り、そしてその場所は指定されている。魂の徳はその食物からであるが、如何なる者も自分の汚物を食べたりすることは無い。

魂を貪る者たちは、暗愚な魂たちを親和性のある暗黒へと受け入れるために開いている暗黒の恐怖の洞穴に過ぎない。「ラキマ」(The Rakima)は黙々として見ていて、辛抱強く座っており、「破壊者」(Destroyer)の日を待っている。その日は百の世代の内にやって来るであろう、「大いなる蒼穹」(Great Vault)に書かれている通りに。

全ての人は心と霊において平等である訳では無い。「南方人」(Southern Man)に学識があるであろうか?あるいは、「アンブリック人」(Ambric Man)は勇敢であろうか?「香の国」(Land of Incense)はその住民たちに全ての良き物を与えているが、彼らは偉大ではない。「輝く湖の国」(Land of Bright Waters)は木や草以外の何も養わないが、そこの人々は筋骨たくましく、そしてライオンは勇気において彼らに匹敵する事は無い。

「天」の水が上にあり、そして「闇の領域」(Dark Region)の水が下にあるが、二つの水があるわけでなく、ただ一つのみである。上なる炎と下なる炎があるが、二つの炎があるわけでなく、ただ一つのみである。「淑女たちの中の淑女」(The Lady of Ladies)は、大いなる試練が始まる時、燦然たる衣服で着飾っている。彼女の足取りはよろめく事は無く、彼女の通り道は真っすぐであるが、彼女がよろめき、無節操な時を油断せず見る事だ。

「偉大なる星々の女王」(Great Mistress of the Stars)よ、我々を平和に保ち給え、というのも、我々は貴方の角の啓示を恐れているのです。「昼の主」(Lord of the Day)の良き妻として常に志操堅固であり続け給え。女性が男性のようにふるまい、そして女性として無節操となる時、「偉大なる淑女」(Great Lady)がさすらう時が近づくのです。男性と女性が似た者として一つに合する時、「火炎の使者たち」(Fiery Heralds)が天の蒼穹の暗黒に現れるであろう。

人は手にしている錐をくるくると回す。彼は火の主であるが、炎が石の中心から飛び出て来て、そして彼を焼き尽くす日がやって来る。人間たちは「隠されたる神殿の主の偉大なる書」(Great Book of the Master of the Hidden Temple)を読む。彼らは死に、そしてその書物を自分たちと共に持ち出すが、その言葉には何の力も無い。我々、「正しい知識のある者たち」(Enlightened Ones)以外の誰が、その隠された意味を知っているというのか?それは死んで地上にある者たち、「冥府」(Netherworld)へと進み出る者たちの為にあるのではなく、死んで我々と共にある者たちの為にあるのである。

人々は、その父祖の慣習に従って、その父祖に供え物をする。その行為は彼らの父の父の父たちのものであるが、その心は閉ざされたままである。愚かなことだ。

「第一の書」(First Book)には書かれている:「行動を起こさない言葉は、風の中のアザミの冠毛である。それらは決して発言されない方が良かったのだ。」

人間の魂は、自分が旅しなければならない場所について知っているが、定められた日に旅立つという事がまだ決して分からない鳥のようなものである。人間たちは「天」(Heaven)に神々を、そして「地上」(Earth)に神々を有するが、「天」(Heaven)は神々の為のものであり、地上は人間たちの為のものである。そのように我々自身の運命について我々は書いた。

「魂の秘密」(Secrets of the Soul)にて書かれている:「人間の魂は、彼の中の小さなものではなく、彼の周囲を包み込むものである。それは「葦の国々」(Lands of Reed)や「リリー」(Lily)の境目よりも大きく、そして星々の向こうまで届くものである。」

生きる為に、人は自分の魂を信頼しなければならない。信頼は外部へ悟らせる事から来るのではなく、魂の囁きを聞く事から来る。懐疑は魂の呟きへの傾聴を止める事から来る。「聖なる書物」(Sacred Writings)を入念に読んで、そして受容的な心で「教えの師」(Instructing Master)の声を聞きなさい。そうすれば、貴方は自分の魂に滋養物を供給することが出来て、支えの欠乏から萎むことは無いであろう。

「真実」(Truth)の種は、昔、黒い肥沃な土地にやって来て、適切に水を与えた土壌に植えられた。「ポンタス」(Pontas)はまだ生まれていなかった。その種は太陽の光の下で育ったのではなかった。というのも、無知な人々がそれを切り落とそうとしたからだ。暗黒な場所にて、その種は開花した。「地上」(Earth)は予想外の場所で、そしてそれを支配する生き物はより予期しがたい。その後、より輝かしい時代の夜明けがやって来た。木々は立派で、そしてその葉は「白い王冠の国」(Land of the White Crown)と「赤い王冠の国」(Land of the Red Crown)の両方を満たした。暗黒の時代には、その木々を公開する人々がやって来て、王は言った。「それを切り倒せ。知恵で息が詰まるといけないから。」

その木は死んだが、その種は生きた赤土の中へと落ちて、そしてそれから苗木が育った。その苗木は「東方」(East)の強い腕の元で庇護された。その後、「優しい風の君」(Lord of the Sweet Breeze)、「生命の木」(Tree of Life)の下に座する者がやって来て、そして彼は町を「隠された真実」(Veiled Truth)へと興した。その町は大いなる道路の上にあり、「ラドス」(Lados)への道の途中にある。彼は「真実の光」(Light of Truth)をぼんやりと人々に明かしたが、彼らは夜の人々であり、その朧げな炎でさえ彼らを焼き尽くした。良き意図の所産は正しくも邪悪にもなる。

「真実の守護者たち」(Guardians of Truth)は明るい炎を覆い隠し、そしてその赤らみでさえ最早人々に見えることは無かった。如何なる無学な者も再びその光を見る事は無かった。

少数の人々の手の中にある秘宝はめいめいにとって重要なものである。多くの者たちの間で共有すると、一人の者にとって殆ど価値を為さないものとなる。我々は昔から人間たちのやり方について聞かされてきた。しかし、我々はその警告を顧みなかった。

今日、「真実」(Truth)は「地上」(Earth)の四つの方面に散在している。そうあるべきであると予言されてきたし、それ故にそれは定められた。一本の木はその種を千個までまき散らすが、ただ一つのみが芽を出して生命に至り、それが土壌中に長くあり続けるのである。

これらの文書は入念な注意の元書き直されて来た。それらはありのままを正確に書き写され、如何なる私の思考や思想もそこに入り込んで来た事は無い。これらの文書が遺産として引き継がれる者たちが、これらの取り扱いにおいて同様に慎重であるように。

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