第三十章 タンタリップの歌 その二

私は運命が微笑む対象となるところの者です。私の恋人は我が人生の光です。彼女は長続きする愛の約束であり、不滅の愛の火鉢であり、未来永劫に渡る喜びの希望です。夜は静まり返ります。というのも、その芳しさは彼女の芳香と比べたら何でもないからです。夜明けの輝きは彼女の愛らしさの前では色褪せ、そして鳩は彼女の美徳を前にして恥じて顔をそむけます。

彼女はたおやかに息をし、その一瞥で慈愛の情を示します。彼女の肌は甘い香りを発散し、そして彼女の髪は盛り上がって自信に満ち溢れ、魅惑と歓喜の隠れた神秘の守護者となるようです。

彼女は優美であり、彼女のローブはこわばっておらず、それは王室のつまり白い亜麻布ではなく、そして彼女を優しく抱擁します。彼女のサンダルは繊細に玉で飾り立てられ、そして彼女の愛らしい巻き毛は青色や赤色の石の飾り環で留められています。彼女の胸は「イシカ」(Ithika)の布地で覆われており、そして銀の留め金で保持されています。

彼女は上品にそして優雅に彼女の扇をはためかせます。彼女の話ぶりは涼しいそよ風のように柔らかです。彼女の目は月に照らされた海水の如く煌めき、その深い淵は繊細にあてがわれた緑や紫の色合いをもって強められます。

男たちは言います。「優美な足取りで、そして生き生きした雰囲気で歩む彼女は誰ですか?血潮のあるバラ色の赤らみが彼女の頬にあり、朝の甘味の香りが彼女の開いた唇から漂っています。高らかに元気づけられた喜びが純潔と混ざり合い、そして淑やかさが彼女の目で煌めいています。彼女の声は心地よくさざ波が立つ流水の如く奏でられ、そして彼女の優しい心の陽気な快活さから、彼女は彼女の優しい歌で万物を喜ばせています。」

私は言います。「彼女は私のもので、私の妻となる予定の人です。」そして、私は彼女の全ての秘密の魅力は私だけのものであると知っている事に自信があります。私は全ての男たちの上へと喜びを持って持ち上げられるか、あるいは絶望の深淵へと投げ出されるかでありましょう。私は男の性質によって彼女を怪しみ、そして自分の考えを非難します。このような美が愛を裏切ったことがありましたでしょうか?

私はかつて彼女の口を満たした甘い微風を吸い込み、そして日々私の頭に彼女の美が思い起こされます。我が心は涼しい北風のように清らかな彼女の愛らしい声の甘美さを待ち望みます。彼女の愛は私の四肢を強くし、私の心臓はその場所から持ち上がってしまいます。私の心を掴んでいる繊細な手を、私にもう一度握らせて下さい。今一度、彼女の温かい抱擁を私に感じさせて下さい。私は涼しい夜風に乗って彼女の名が囁かれるのを耳にし、私の霊が反応することなくそれを聞く事は決してありません。

おお注1、我が「主なる神」(Lord God)よ、征服の旅にて我を導き給うたる者、戦闘において我が右腕に命令せし者、そして勝利において我が自尊心を和らげたる者よ、今、平和の時に我を助け給え。大騒動が終わった時に我を助け給え。私は戦闘のやり方において良い技能を持っているけれども、平和な生活の罠や奸計にはたやすく犠牲者となってしまいます。

我が子らの母となり、我が人生の伴侶となるべき我が心の望みを我に与え給え。私は熱情で燃やされ、冷静に冷ます真実の愛の水が必要です。我が肉体は夜に非常に離れている者へ向かって泣き叫びます。貴方は男たちを作られたのと同様に私を作られました。貴方は私に渇望を与えられました。今、私に安堵を認め給え。

私は孤独であり、私が二人となるべき時に一人です。私は話しますが、誰も応えません。私は食事をしますが、食物は風味に欠けます。私は喉が渇きますが、誰も水を持ってきません。私は未使用の剣でありますが、その剣が鞘の中錆び付かせないようにして下さい。

私は私のもう一人の自分を待ち、我が右半身は我が左半身との結合を望んでいます。私は待ち、そして待ち焦がれる事が無益でない事を知っています。私は彼女が来るのを待ち、彼女は、時の始まりの頃から彼女がそうであるように、その途上にあります。彼女は近づいて来て、我が霊はその座から跳び上がり、彼女と会うために体から躍り出ます。私は彼女と会い、彼女は私のもので、その齢まで私の為に形作られ、彼女の体は私のもので、私の体は彼女のものです。我々は永久に婚約しているのです。

私は彼女を常に私の為に取って置き、私は決して彼女が空腹となったり、彼女の運命を嘆いて生きさせるような事はしません。我々は七つの人生を共に共有し、そして私はそれぞれの人生において彼女を新たに求めるのです。

人は二物です。気力の人生と肉体的な人生と。愛は全てのものを一緒に保ち、そして自分の最も愛する人の秘密の魅力を他の者と共有するような如何なる者も、愛の喜びを知る事は出来ません。


脚注

注1:原語は"0"、つまり数字のゼロである。しかし、文脈からして、これは"O"(おお)と訳出すべきであろう。

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