第三章 聖なる記録 第三部

見よ、白いサンダルを履き、見事な亜麻布を纏った者がやって来る。起立せよ。立って彼に挨拶せよ。彼は正義の杖を持っている。彼は値段のつけられない貴重な真珠を持ってくる。それを受け取り、そして完全無欠となられよ。

他の者たちがやって来る。美しい女性たちと若い子供たちである。彼の父の相続人と、おいしい水を纏う四人の偉大なる者たち、つまり饗宴を催しそして彼らの擁護者の強力な腕の元で祝う者たちがやって来る。去りし者は忘れられることがない。が、この日は生者たちの日なのである。

相続したる者は泣くのを止め、笑顔になり始めた。保護する者が無事にやって来たからだ。天の心はもはや肩身が狭い訳では無く、それは広がり、大きく成長する。かくして、それは同様に生きる者の心と共にあり、その哀悼の日々は過ぎ去り、その心はふくらみ、そして大きく成長する。

良い息子は、肉体の束縛から脱出した者の不在に代わって、誠実なる仕事を行う事を決して止めることはない。本分を守る息子は今や、彷徨う影や「生命の亡霊」(life Shadow)による苦悩からの保護の為に、不在なる者に頼るのである。

おお、慈悲深き、「絶えず情け深き者」(Ever Considerate One)よ、その言葉がかぐわしい香の青い浸透する煙を伴って立ち上るように、貴方の忠実なる、本分を守る息子の言葉を聞かれよ。いかなる亡霊も貴方の安全なる棲み処から彷徨い出て、我々の住居を悩ます事がありませんように。というのも、そこに住む者たちは貴方に対して、何の面汚しとなる事も為したことが無いからです。「暗黒の戸口」(Dark Doorway)を護り給え。堕落した形の者どもが我々に近づいて来て、我々の体を病気で汚染することが無いように。

貴方は去った。そして川面が再び上昇する前に、「ショデュー」(Shodu)の男、黒い石の水路の傍に居住する未亡人と共に苛酷に住んでいた者が、自らの判断から死去した。貴方が裁いたその男はおりませんか?そして貴方は、天秤が彼に対して下がる時、その男を正しく取り扱いませんでしたか?それ故に、その男が、彼の同類たる他の者たちと共に、「暗黒なる地」(Region of Darkness)から舞い戻って来て、我々に不幸をもたらす事が有り得ないでしょうか?貴方を彼は害することは出来ません。貴方は今や、西方の海 注1 の向こうにある地における、「栄光なる場所」(Place of Glory)に居るからです。それ故に、「栄光なる一団」(Glorious Company)の中から我々に守護者を送ってください。彼らが我々の居住地の上に保護する羽根を広げることが出来るように。

多くの者たちがやって来る、素晴らしい食べ物の一塊と大麦の一塊、様々な種類の大きく脂ののった魚や肉、広口瓶に入った豊富な蜜酒やフルーツを携えて。その饗宴を欠席している者は喜びにあふれ、彼の腕は強く、そして彼は守護者らに命令を発する。すべての憂鬱を投げ捨て、喜ばしくあれ。というのも、これは悲しみの時ではなく、涙が貴方がたの目の中にその場所を占めることは無い。

もし保護する境界の向こうからの善意ある「生命の亡霊ら」(Life Shadows)が在るならば、彼らは参加してもよい。歓喜する我らに加わるが良い。我ら全てが、我々が用意し、我々が分け合うものを楽しもう。というのも、生命とは抑えきれないものであるからだ。

「炎の子ら」(Sons of Fire)の儀式によると、我らが兄弟「グウェルム」(Gwelm)に言われた、外国の地からもたらされた事がある。このように、石の寝室へ入る者たちが在るであろう。


脚注

注1:原語は"Westerna waters"。"Westerna"はおそらく、"Western"の誤りであろう。「西方の海」と訳した。

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