第二十七章 ネファタリの歌 その一

私は私の歌を歌います。何故ならば、「大地」(Earth)が歌うから。風が木立の間で鎮められるとしても、優しく快活な旋律を依然奏でます。情け深い空は優しく下に見やり、葉っぱの旋律に耳を傾けるので、その息は静まっています。露は朝に笑顔を見せます。というのも、それは星々からの愛の光を捕らえたから。私の歌は美しいです。何故ならば、私の心はその胸の内で楽しそうに踊り、その喜びは私の頭の中に陽気な音楽を伝え、私の唇に愛情を表す言葉を紡ぎ出させます。

私は愛にひたむきなので、私にはただ一つの愛、私の人生の美しい入れ物があります。私の心は貴方との交わりを常に求めている寂しいものです。私の心は貴方に失われているので、貴方の心に寄り添う貴方の胸の中で脈打たせて下さい。というのも、私の心は確かに貴方の胸に帰属するからです。私の愛は健全で、いかなる過去の愛情の残渣にも汚されてはいません。私の愛は優しく純粋であり、それ故に、男らしい優しさで扱って下さい。というのも、私の愛は貴重な宝物だからです。私は喜ばしく私の愛を与え、そしてそれ以上を与える事は出来ません。私が貴方に与えるものは、他の如何なる男性にも与えることは出来ません。貴方にとっては愛らしい真珠であり、他の男性たちにとっては空っぽの貝殻です。

私が貴方の為だけに生きる様にして下さい。私を貴方の主婦として尽くさせて下さい。貴方の子供を私の胸に抱かせ、毎晩毎朝貴方の存在によって私の目を喜ばせて下さい。貴方の存在の素晴らしい輝きの中で、私を途切れることなく暖まらせて下さい。私の喜ばしさと快活さの源から私が決して離れず、私たちが共に人生の回廊を進んでいき、貴方の腕が私の腕の上に置かれ、私の手と貴方の手が合わさる様にして下さい。

私の心は荒地です。まるでしぼんだ花のようです。貴方は離れていて、私の愛する人よ、そして私の目は貴方の到着を求めて道を探します。睡眠の抱擁は私を忘れさせます。というのも、貴方の影像が私の横に常にそこに在り、そして私は最も元気づける(貴方の)影でさえ慰めを見出す事が出来ないのです。私の元へ来てください、私の外ならぬ愛する人よ、私が貴方の肉の温かさを感じ、平安で居られるように。

貴方が不在の間、私は女性の心に喜びをもたらす物事に二度と関わった事はありません。私は髪の処理を怠り、頭環は顧みられることなく壁にかかっています。巻き毛の道具は放置されています。というのも、私は貴方の到来を待ってこれらを身にまとい、そして私の陽気さで貴方を迎えたいのです。私の唇で歌は沈黙を守ります。というのも、私の心には喜びが無いからです。

貴方が離れている間、私の心はまどろんでいて、私の胸は空っぽです。早く帰って来て、私の愛する人よ、私の心が目覚めて、生命の鼓動で喜ばしく胸を打つことが出来るように。私は貴方の到着を夜明けが太陽を待つように、乾燥した土地が洪水を待つように待っています。

私の目は夜空を探し回り、そして星々のつがいのダンスが見えます。私の周囲の「地上」(Earth)は、愛の鼓動の拍子で脈打ちます。暗い海水は生命の神秘を反射しますが、私はその岸辺に寂しく座っています。私の元へ来てください、私の愛する人よ、というのも、貴方以外の誰も私の応答を目覚めさせる事は出来ないのです。私は愛の海の浜辺に一人で立っています。来て、おお、来て、私たちが一緒に魔法のかかった海へ入る事が出来る様に。

夜は、私が貴方を待ち焦がれるように昼を待ち焦がれるでしょうか?喉の乾いた旅行者は、私が貴方を慕うように水を渇望するでようか?もしそうならば、彼らは本当に気の毒に思われることでしょう。おお、来て、私の外ならぬ愛する人よ、そして私の日々を貴方の愛の陽光で満たして下さい。

人間の歴史は決して愛に不毛であり続けたことは無かったように思われます。

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