第二十六章 センムット(Senmut)の巻物より

その石材運搬者は石のサイズを測り、そしてその石は形を整えられて場所に押し込まれた。それは適合してそして監督者はそれを見て言う。「この石は良く配置された。指定された場所に留まっている。」

その石の傍に、他の石が置かれて据えられた。各々がそれ自体の形と意匠に従って、各々がそれ自体の場所と位置に設置される。そしてその上に他の石が配置されるので、それ(最初の石)は建築物の基礎の中で視界から隠れるようになる。建築物が現れて来て、堅固で強く、王子の居所となる。

私は人々が「彼は永遠に建ち続ける建築物を建築する。」と言う所の者である。私は目が届くことが無い建物の基礎の中の、地面の下深くにある石を記憶している。男たちはそれがそこに在ることを知っており、それはその場所にちょうど留まっていて、その指定された役目、建物の支持の必要を満たしている。石が小尖塔の上に設置されて、太陽に照らされ、常に人々の目にさらされるのと、石が地中に隠され、基礎の中で目に見えないのと、どんな違いがあるのか?石はその正し場所にがっしりと据え付けられて、動かないようにする事によってその責務を果たすのである。

私、永久に建ち続けるであろう大きな建築物を建築する者が、その石を記憶している。

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