第十九章 歌の書からの讃歌 その一

音楽の楽器を持ち出し、「我々の命の主」(The Lord of Our Lives)への感謝を込めて全ての声を上げよ。心から幸せとなり、貴方の唇から喜びを流れ出させよ。しかし、手が動く間は沈黙を保つように。

平安と誉は「貴方のもの」(Yours)です。おお、我々が唯一敬意を表する「偉大なる者」(Great One)、「我らが日々の影」(Shadow of Our Days)、「我らの夜を慰める者」(Comforter of Our Nights)よ。遠い昔、空の扉が開いて「貴方」(You)は我らの父祖の日々に地上に現れられて、「貴方の」(Your)憤怒をもって大地を揺らされた。しかし、今や「貴方」は隠されており、「貴方の」畏怖させる栄光はもはや見られない。我々、「貴方の」子らは、喜ぶ。というのも、「貴方」は平和をもたらし、「地上」(Earth)の全ての表面に渡って満足と安全を広められているから。

「天と地」(Heaven and Earth)、そして無限なる空間たる全圏が「貴方の霊」(Your Spirit)で満たされています。暗黒の悪鬼たちは「貴方」の前に震えています。にも拘らず、我々にとって、「貴方」は真に「神秘的なる隠されたる者」(Mysterious Hidden One)であり、太陽の表面が人間の目には薄暗闇に覆われた時の暗黒なる悲しみの日々においては我らが父祖の「案内者」(Guide)でありました。

「貴方」は善良を注ぎ出し、緑の牧野に新鮮な水をもたらされて、そこにいる全ての獣や生き物たちに活気をもたらされた。「貴方の」恵み深さの天恵を通じて、乾ききった土地でさえその時期に絶え間なく水を飲む。「貴方」は「パンを授ける者」(Bestower of Bread)です。というのも、貴方は穀物を増やして収穫が豊作となるようにされたからです。「貴方」は「葦を供給する者」(Supplier of Reeds)であり、「魚の供給者」(Provider of Fish)です。「貴方」の手の導きの元にある時は、全ての熟練工は繁盛して腕も良いのです。

「貴方の」目は鍛冶屋の金槌を監督し、そして「貴方の」手は陶工の指を覆っている。「貴方」が作り出した息は熟練工によって吹き付けられるので、彼は霊感を与えられて美しい物を作り出します。「貴方の」そよ風の囁きや人間たちの心は、喜びの歌として彼らの口から紡ぎだされる喜びに満たされます。「貴方」は絵描きの刷毛を動かし、物書きの筆を監督します。

「貴方」は水の中にあっては「魚類の管理者」(The Warden of Fishes)であり、魚たちを漁師たちの網へと導きいれる。「貴方」は慈悲深い流れの増水時に種蒔きされる畑に水鳥を近づけないようにする「見張り番」(The Watchman)です。「貴方」は流れる水の上を安全に移動する艀の舳先における「見張り人」(The Lookoutman)です。「貴方」は帆に押し付けてエネルギーを与えるそよ風の「管理者」(The Director)です。

「貴方の」手は穀物粉をひき、そして「貴方の」活力を与える息は発育する緑の若枝を吸い上げる。「貴方の」指は目覚めの蕾を広げる。「貴方の」堅固さは岩を安定した位置で支えるので、大きな建物は長年に渡り持ちこたえる。如何なるものも「貴方の警戒」(Your Vigilance)から逃れることは出来ず、そして安息は「貴方」には知られていない。永遠なる活動が「貴方の」性質の本質です。

「貴方」は「常に用心深い者」(The Ever Watchful One)、「天秤の偉大なる運び手」(The Great Bearer of the Scales)、「助けなき者たちの為の変わらぬ守護者」(The Unchanging Guardian of the Helpless)、そして「貧者の保護者」(Protector of the Poor)です。地上でこれらの役割を占める者たちは、「貴方の」名においてそれを行うのです。というのも、「貴方」はそういった者たちの行いの背後にある動機であり力であるからです。もし「貴方」が存在しないのであるならば、人間たちはワニのようにお互いに貪り食い合い、正義や慈悲は未知なるものとなるでしょう。触る事が出来ず目に見えない何かが「貴方」から流れ出て来て、そして人間たちの暮らしを支配していて、人間たちがお互いに公平に取り扱うようにさせている。というのも、不正というものは人生の枠組みの一部であるにも関わらず、それは優位を占めている訳では無く、そして「貴方の」力はその効果を緩和する効果があるからです。

「貴方」は地表を撫で、そして「貴方」が触ると「地球」(Earth)の子宮が開かれて、土地の端から端まで発達した緑が芽吹き、そして太陽へ向かって背伸びをする。全ての生き物は「貴方の」設計に従って動き回り、そして「貴方の」命令によって、それらの生命たちは監督された。「貴方」は生命の模様を描き、その運命を定める。

王子が羽毛の枕に彼の頭を横たえて、そして乞食が固い岩の上に彼の頭を横たえるとしても、両者は「貴方の」胸の上に同様に眠る。金持ちの人の睡眠は貧しい男の睡眠と同様であり、一方労働者の睡眠は怠け者の睡眠よりも良い。「夜に脅かす者」(The Nightfrightener)は、その日の親方に債務を支払った者の夢に出没することは無い。自分の日々を遊びによって過ごす者たちは落ち着かない寝床に眠る。かくして、「貴方」は人生の秤が調整されるように命じました。全てが「貴方の」手の内に均衡しています。

「貴方の」霊は地上を動き、ミツバチに蜂蜜を集める様に指示し、そしてスズメバチにはその巣を作るように指示する。「貴方の」霊は蟻がその巣穴の複雑な設計をするよう監督し、そしてツバメに泥集めをさせる。「貴方の」霊は鳥たちにその季節を教え導き、約束の時期にバッタを呼び出す。全ての生き物はその学んだ訳では無い知恵を有し、それは「貴方の霊」(Your Spirit)から放射される流れの迸りです。

「貴方」が「地上」(Earth)を「貴方の」命令の元に昼間を規定する輝く光で満たす時、全ての人々は喜ぶ。というのも、これによって全てのものが増大し、食物が豊富に現れるからです。「夜の淑女」(Lady of the Night)が暗闇を支配し、柔らかな涼しさの内に全てが静まっている時、心は静穏と満足で満たされます。「貴方」は人間たちの必要な物全てを満たす。というのも、「貴方」は「偉大なる提供者」(The Great Provider)だからです。

人々は畑で労働し、そして貯蔵庫を穀物で満たす。が、「貴方」がその増量を用意します。「貴方」は「常に気前の良い者」(The Ever Bountiful One)ですが、「貴方」が与える全てにおいて、「貴方の」物は減る事がありません。「貴方」は永久不変に同じであり続けます。人間は、「貴方」から生じるもの以外に何も持ちません。人間を支えるのは、永久不変に流れる「貴方の」生命の水です。永遠なる栄光は「貴方のもの」(Yours)です、我が「神」、我が命よ。

「私は「貴方」を数多くの寺院で求めたが、全ての他の神々(gods)の背後に隠された「一つなる神」(One God)が存在することを見出すだけでした。「貴方」は本当に「神々の父」(The Father of Gods)でありますが、それらの神々のいずれも作り出している訳ではありません。「貴方」は広範囲に及ぶ世界を美で輝かせ、そしてそれを畏怖させる、例えようのない不滅の壮麗さで満たしました。「貴方の」わざは非常に素晴らしいので、それらは覆い隠さなければなりません。従って我々は、我々が圧倒されるといけないので、それらをただぼんやりと悟ることが出来るのみです。

「昔、多くの偉人たちが「貴方」を誤って称えて来ました。彼らにとって何が良いものであるかを知らずに、彼らは肉体のみを楽しませる物事を獲得することを追求しました。おお、「偉大なる者」(Great One)よ、こういった事は彼らのやり方の誤りであり、彼らがこれらに値することが出来る様に全ての者たちをより良い人間とする以外、彼らに人生の良い事物を与える事は無いという事をお示し下さい。「貴方」は並々ならぬ大いなる愛をもって我々を愛してこられ、我々の多くの欠点や弱さに対して憐みを抱かれ、人間たちは全く道を踏み外しがちな誘惑に負けやすい生き物でである事をご存知です。おお、「神々の神」(God of Gods)よ、彼らの信頼を「貴方」に寄せた我らが父祖たちの為に、「貴方」が人生の神の定めを与えた者たちの為に、我々に慈悲深くおあり下さい。我々が辿るべき道に沿って我々を指導し案内して下さい。地上生活の数多の深いかかわりを通じて我々を導いて下さい。我々が終に「貴方の」保護の内にくつろぎを得るようになる為に。

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