第六章 暗黒なる日々

暗黒なる日々が「破壊者」(the Destroyer)の最後の来訪と共に始まり、そしてそれらは空の不思議なしるしによって予示された。全ての人々は静まり返り、そして青ざめた顔で動き回った。

「ソーム」(Thom)の栄光の為の町を建設した奴隷たちの頭たちは不安を扇動し、そして誰も彼らに向かってその手を挙げる事はなかった。彼らは、人々がそれに関して無知であり、そして神殿の占い師たちが知らされていなかった大事件について予言した。

これは不吉な静けさの日々であり、人々はそれが何であるのかを知らない何かを待ち受けている時であった。

目に見えない破滅の存在が感じられ、人々の心は悩まされた。

最早笑い声が聞こえてくる事もなく、そして全土を通じて悲嘆と泣き言が聞こえてきた。子供たちの声ですら止み、彼らは共に遊ぶこともなく、静かに佇んでいた。

奴隷たちは大胆で横柄になり、女たちはどんな男でもものにする事が出来た。不安が国土を闊歩し、そして女たちは恐怖によって不妊となり、彼女らは身ごもる事も出来なくなり、妊娠している者たちは流産した。全ての人たちが口を閉ざした。

静けさの日々の後には、「天上」(Heavens)でラッパと金切声の騒音が聞こえてきて、柵のない所で獅子がうろついているロバの如く、人々は牧夫のいない怯えた獣のようになった。

人々は奴隷たちの神について話し、そして無責任な者たちは言った。「もし我々がどこでこの神が見出されるかを知っていたのであるならば、我々は彼に犠牲を捧げたであろう。」しかし、奴隷たちの神は彼らの間にいなかった。彼は沼沢地やレンガの穴の中に見出されるであろう筈がなかった。彼の発現は全ての人たちが見れるように「天上」(Heavens)にあったが、彼らは理解をもってそれを見る事はなかった。あるいは、どのような神も聞き届けようとはしなかった。というのも、あらゆる神は人間たちの偽善のため、口をつぐんでいたからである。

死者はもはや神聖ではなく、そして川に投棄された。既に埋葬された者たちは顧みられる事がなく、そして多く(の死体)が風雨にさらされていた。死体は盗賊の手に対して無保護で横たえられた。かつて日の元で、くびきを帯びて長時間労役を強いられていた者は、今や斧を手に入れていた。何の穀物も育てなかった者は今や貯蔵庫をいっぱいにして所有していた。かつて子供たちと共に安穏に暮らしていたものは今や喉が渇き水を欲していた。かつてパンくずと残り物と共にお日様の元に座っていた者は今や食べ物を詰め込み、日陰でもたれかかり、彼の椀は溢れ返っていた。

家畜は世話される事無く放置されて妙な具合に変わってしまった牧草地をうろつき、そして人々は家畜に刻印された焼印注1を無視して隣人たちの家畜を殺した。如何なる者も何も所有しているという事はなかった。

公的な記録は追い出されて破壊され、そして誰が奴隷であったか、誰が主人であったかを誰も知ることが無くなった。人々は困惑して「ファラオ」(Pharaoh)へと強く抗議したが、彼は聞く耳を持たず、つんぼの如く振舞った。

「ファラオ」の面前で偽りの話をした者たちがいて、そして彼らはその国に対して神々が敵対するようにした。それ故に、人々はそれをなだめる為に人々の血を求めて泣き叫んだ。しかし、その国に平和でなく争いをもたらしたのはそういった異国の僧侶たちではなかった。というのも、ある者は「ファラオ」の一家の者でさえあり、制約を受ける事無く人々の間を歩き回っていたからだ。

ちりと煙の雲は空を暗くして、血の色彩でそれらが降る川の流れを色付けた。疫病が全土を通じて生じて、そして川は血の色となり、いたるところに流血があった。水は汚れ、そして人々の腹は水を飲む事を避けた。川の水を実際に飲んだ者たちはそれを吐き出した。というのも、それは汚染されていたからである。

そのちりは人や獣の皮膚の傷を引き裂いた。「破壊者」(the Destroyer)の真っ赤な輝きの元、「地上」(Earth)は赤一面で満たされた。害虫がかえって空中と地表を忌まわしく満たした。野生動物注2は、打ち付ける砂や灰の元苦痛に悩まされて、自分たちの荒野にあるねぐらや洞穴の場所から出てきて、人々の住処を漁った。全ての家畜は訴える様に鳴き、そしてその国は羊の鳴き声や牛のうめき声で満たされた。

木々は、全土を通じて、破壊されて如何なる草や果実も見出される事はなかった。地表は打ちのめされて、石の雨の奔流の通り道に立っている全ての物を激しく打ち下ろす石の雨あられによって荒廃した。その石の雨は熱いシャワーとなって急襲し、そして不思議な流れる火炎が地表をその通り道に従って迸った。

川の魚は汚染された水の中で死んだ。芋虫、昆虫、そして爬虫類がひょっこりと地面から現れ、それは膨大な数となった。強烈な突風がバッタの群れをもたらし、その群れは空を覆った。「破壊者」(the Destroyer)がそれ自身を「天空」(Heavens)を横切って投げうつ時、それは大量の燃え殻のにわか雨を地上全域に吹き付けた。長い夜のうす暗闇があらゆる光線を消し去った暗黒の外套の暗闇を行き渡らせた。誰もいつが日中であるか夜であるかを知らなかった。というのも、太陽は影を投げかける事が無かったからである。

その暗闇は夜のきれいな暗闇ではなかった。人の息が喉で詰まるようなドロドロした暗闇であった。人々は全土を覆い包んだ熱い蒸気の雲の中で喘ぎ、そして全ての灯火や炎を消した。人々はしびれさせられて、そして床の上で呻きながら横たわった。誰も他の人に話しかけず、あるいは食物を摂らなかった。というのも、彼らは絶望に圧倒されていたからである。船はその停泊所から吸い寄せられて引き離され、そして巨大な渦巻きの中で破壊された。それはあらゆるものを台無しにする時であった。

地面は、陶工のろくろの上で粘土が回るようにひっくり返った。全土が頭上にある「破壊者」(the Destroyer)の雷鳴からなる騒音と人々の叫び声で満たされた。四方八方に呻きと悲嘆の声があった。注3 地面は(埋めていた)死者を噴出し、死体はその安置所から投げ上げられて、防腐保存された死体はあらゆる人々の視界に暴露された。妊婦は流産し、そして男らの種も止んだ。

職人は自分の仕事をやり残しにして、陶工はろくろをなげうち、そして大工は自分の工具をなげうち、彼らは仕事を離れて沼沢地に住んだ。あらゆる工芸はおろそかにされ、そして奴隷たちが職人たちを誘い出した。

ファラオの税は集められる事が出来なかった。というのも、小麦も大麦も、ガチョウも魚もなかったからである。ファラオの権利は実施される事が出来なかった。というのも、穀物畑や牧草地は破壊されたからである。高貴なる生まれの者たちも卑しい生まれの者たちも共に、生命が終わるかもしれず、そして彼らの耳をつんざく大混乱と雷鳴が止む事を祈った。昼の間は恐怖が人々の連れであり、そして夜の間は戦慄が人々の連れであった。人々はその感覚を失って狂い、恐怖によって混乱させられた。

「破壊者」(the Destroyer)の天罰の大いなる夜には、その恐怖がその極みに達した時、岩の雨あられが起こり、そして地面は痛みがその腹を引き裂くようにうねった。門、柱、そして壁は炎に焼き尽くされ、そして神々の彫像はひっくり返されて破壊された。人々は恐怖におののき自分たちの居所の外へと逃れて、(岩の)雨あられによって殺された。その(岩の)雨あられからの避難所を獲得した者たちは、地面が口を開いたときに飲み込まれた。

人間たちの住居は陥没して中へと落ち込み、そして四方八方でパニックが起こったが、葦の原にある窪んだ場所の小屋に住んでいた奴隷たちは容赦された。国土は猛烈に燃え、一人の男が自分の家の屋根の上で眺めていると「天」(Heavens)は彼に向って天罰を投げつけて彼は死んだ。

国土は「破壊者」(the Destroyer)の天罰の元で悶え苦しみ、そしてエジプトの苦悶をもって呻いた。地面そのものが揺れ、そして神殿や高貴なる者たちの宮殿はその基礎から倒壊した。名門の者たちはその破滅の間に非業の死を遂げ、そしてその国の強き者たちが全て襲われた。偉大なる者でさえ、ファラオの長男がその脅威と降りかかる石の雨の間に高貴なる者たちと共に死んだ。王子たちの子供たちは通りに投げ出され、投げ出されなかった子供たちはその住居で死んだ。

九日間に渡る暗闇と大変動の日々があり、今まで知られていなかったような大嵐が猛威を振るった。それが過ぎ去った時、全土を通じて兄弟が他の兄弟を埋葬した。人々は権力者たちに向かって立ち上がり、そして街から逃れて辺境の天幕に居住した。

エジプトにはその時代に対処する偉大なる人がいなかった。人々は不安故に弱り、そして金、銀、青金石、トルコ石、そして銅を奴隷たちに与え、そして僧侶たちには聖杯、壺、そして装飾品を与えた。ファラオだけが落ち着きを保っており、混乱の間にあって精神的にしっかりしていた。人々はその薄弱さと絶望の中で邪悪な事を始めた。売春婦たちが恥じる事無く通りを闊歩した。女たちはその四肢をひけらかし、そしてその女性的な魅力を見せびらかした。高貴な生まれの女たちはぼろきれを纏い、貞淑さは嘲笑された。

「破壊者」(the Destroyer)により容赦された奴隷たちは直ちにその呪われた国を去った。奴隷たちの群衆は見事に渦を巻く灰色のトネリコのとばりの元、夜明け直前の薄暗がりの中うごめき、そして焼野原と破壊された街を彼らの背後にして発った。多くのエジプト人たちがその群れに参加した。というのも、身分の高かった者、宮殿の中庭の僧侶であった王子の一人が彼らを導いたからである。

炎が激しくその火勢を増し、そしてその燃焼はエジプトの悪魔と共に残された。その火炎は泉の様に地面から立ち上り、そして空をカーテンのように飾り立てた。七日間に渡り、「レムウォア」(Remwar)に沿って呪われし者たちが海まで旅をした。彼らは膨れ上がった荒野を横切ったが、その間丘は彼らの周囲で溶けていた。上方では、空は稲妻に引き裂かれていた。恐ろしさから彼らは急かされていたが、彼らの足はその地でまごつき、そしてその荒野は彼らを閉じ込めた。彼らは行くべき道が分からなかった。というのも、彼らの面前に何の印も不変であり続ける事がなかったからである。

彼らは「ノシャリ」(Noshari)の前で転回し、そして石切り場である「ショコス」(Shokoth)にて止まった。彼らは「マハ」(Maha)の水域を通過してそして「マラ」(Mara)の北方にある「ピカロス」(Pikaroth)の谷にやって来た。彼らは自分たちの道を塞ぐ水域に出くわして、彼らの心は絶望で満たされた。その夜は不安と恐怖の夜であった。というのも、上方では高らかに呻くようん音がして、そして地下世界からの黒い風が解き放たれ、炎が地面から躍り出ていたからである。奴隷たちの心は委縮した。というのも、彼らは激怒したファラオが彼らを追っている事を知っており、また、どこにも逃げ道がなかったからである。

彼らは自分たちを導いた者たちへ罵りの言葉を投げつけた。その夜には岸部に沿って不思議な儀式が執り行われた。奴隷たちはお互いに言い争いあって、暴力沙汰も起こった。

ファラオは自分の軍勢を集めて、奴隷たちを追った。ファラオが出発した後、彼の背後には暴動や混乱が起こった。というのも、その街は略奪されたからである。法律は裁判所の外に投げ捨てられて、そして通りで足下に踏みつけられた。貯蔵庫や穀物倉庫は壊されて開放され、中にある物は盗まれた。道路は洪水にあい、そして誰もそれに沿って通行する事が出来なかった。あらゆる所で人々が死んで横たわっていた。宮殿は分裂して、王子たちや役人たちは逃れ、誰も権威をもって指揮命令する者が残らなかった。数字の一覧は破壊され、公共の場は打ち壊され、そして家庭は混乱して不詳となった。

ファラオは悲しみの内に進軍した。というのも、彼の背後では全てが荒廃して死屍累々としていたからである。彼の前には彼が理解できない事があって怖気づいたが、彼は自分自身を上手く運んで、勇気をもって自分の軍勢の前に彼の位置を占めた。彼は奴隷たちを連れ戻そうとした。というのも、奴隷たちの魔法はエジプトの魔法よりもより優れていると人々が言ったからである。

ファラオの軍勢は海水の浜にいる奴隷たちと出くわした。が、炎の息によって奴隷たちより後退させられた。夥しい雲が軍勢の上に広がって空を暗くした。猛火の照り輝き以外は何も見る事が出来ず、そして止む事無き稲妻が頭上の覆いつくす雲を引き裂いた。

「東方」(East)で旋風が生じて、陣を張った軍勢へと押し寄せた。疾風が一晩中荒れ狂い、そして赤い薄明かりの夜明けには地面の動揺があり、海の水が海岸から後退してそれ自身へと押し返した。薄暗がりの中、奇妙な静けさと人々があって、海水が二つに分かれるのが見えて、その間に通路が残された。地面は隆起したが、かき乱されて身震いし、その道は真っ直ぐでもなく、はっきりしたものでもなかった。周囲の海水は椀の中で旋回するが如きであり、湿地だけが乱される事無く残っていた。「破壊者」(the Destroyer)の警笛から甲高い金切声のような騒音がやって来て、人々の耳を塞いだ。

奴隷たちは絶望から犠牲を提供してきており、彼らの悲嘆は大声で響いた。今や、奇妙な光景を前にして、躊躇と疑念があった。というのも、息をつく間の空間に彼らはじっと動かず静かに立ち尽くしていたからである。その後全ての人たちが混乱して叫び、ある者たちはその不安定な地面から逃れようとする全ての者たちに逆らって、その水域へと前進した。その時、彼らの先導者は興奮して、混乱した者たちの間を通って彼らをその水域の中へと導いた。しかし、多くの者たちが自分たちの背後にある軍勢の方へと後戻りしようとし、他の者たちは何もない浜辺に沿って逃げ惑った。

海上と浜辺では全てが静まり返ったが、背後では、地面は震え巨礫は大音響をあげて裂けた。「天」(Heaven)の怒りは遠方へと退き、そして二つの群の上方へ位置した。

それでも、ファラオの軍勢は、不思議で恐ろしい出来事を前にしてその決心も堅くその階級を保っており、彼らの横で荒れ狂う猛威にひるむ事は無かった。厳めしい顔つきが火炎のカーテンによってぼんやりと照らされた。

その後、猛威は止み、静寂があった。静けさが全土に広がり、一方ファラオの軍勢は赤い照り輝きの中動くことも無く立ち尽くしていた。すると、叫び声と共に、司令官たちが前進し、そしてその軍勢は彼らの後について奮起した。火炎のカーテンは天蓋の如く広がる暗黒の雲のうねりの中へと集まった。その水域は撹拌したが、巨大な渦巻きの場所を過ぎてその悪者たちを追った。その通り道は水域の中で混乱したものとなり、足下の地面は不安定であった。ここ、水域の喧騒のさなかで、ファラオは奴隷たちの最後部と戦って彼らに打ち勝った。砂地、湿地、そして水の間では大虐殺があった。奴隷たちは絶望から泣き叫んだが、その叫びは顧みられる事が無かった。奴隷たちの所有物が彼らが逃れた後に散乱したので、行く道は追う者たちよりも奴隷たちの方が移動しやすかった。

すると、強烈な轟音によってその静けさが破れて、回転する雲の柱を通じて「破壊者」(the Destroyer)の天罰が軍勢へと下ってきた。「天上」(the Heavens)は一千もの雷鳴と共に轟音を立て、「地面」(Earth)のはらわたは引き裂かれ、地面はその苦しみから金切声を上げた。崖は引き裂かれて投げ倒された。渇いた地面は海水の下へと落ち込み、そして巨大な波が浜辺へと打ち寄せ、海側から岩塊を押し流してきた。

岩塊や海水の怒涛の波は歩兵の前を行くエジプト人の戦車隊を圧倒した。ファラオの戦車は、強力な手によって為されるが如く空中へ投げ出され、そしてうねる海水の間へと押し込まれた。

(エジプト軍の)災害の知らせは「ソマット」(Thomat)の子「ラゲブ」(Rageb)によってもたらされ、彼はその火傷の為、恐れおののく生存者たちの先頭で先を急いでいた。彼は人々に暴風と氾濫のによってエジプト軍が滅ぼされたとの報告をもたらした。司令官たちはいなくなり、屈強の男たちは水の中へと落ち込み注4、そして指揮を執る者たちは誰も残っていなかった。それ故に、人々は、自分たちに降りかかった災難の為に反乱を起こした。臆病者たちはその隠れ家からこそこそと出てきて、そして大胆に現れて死者たちの高い地位を横領した。端正で高貴な女性は、その保護者たちが居なくなったので、その臆病者たちの餌食となった。奴隷たちの間では、ファラオの軍勢を前にしてより多数の者たちが非業の死を遂げた。

滅茶滅茶になった陸地が手の施しようもなく横たわり、そして侵略者たちが腐肉のような陰影からやって来た。異国の人々がエジプトに立ち向かったが、誰も立ち上がって戦おうとしなかった。というのも、力も勇気も無くなってしまったからである。

「アルケナン」(Alkenan)によって率いられた侵略者たちは、その国を不毛の地とした「天」(Heaven)の復讐の為「神々の国」(Land of Gods)からやって来た。そこでもまた、爬虫類や蟻の疫病があり、しるしや予兆や地震があった。そこでも、同様に、「破壊者」(the Destroyer)の灰色の息がさっと地上を通って人々の息を止めた、大混乱や災害、騒動や飢饉があった。

「アントゥーラ」(Anturah)は彼の戦士たちやエジプトに残された戦士たちの生き残りを一緒に集め、荒野を経由してそして「イェスノビス」(Yethnobis)を経由して東方の山からやってきた「暗黒の子ら」(Children of Darkness)と会うために出発した。彼らは、暗闇が明ける前、清めの風が来る前に、灰色の雲の背後にある打撃を受けた国で倒れて死んだ。

「ラゲブ」(Rageb)はファラオと共に「ヘロシャー」(Herosher)へ侵入者たちとの会戦へ行ったが、エジプト人たちは心中弱気であった。彼らの霊は最早強くはなく、それ故彼らは戦いに負ける前に敗走した。天上天下の神々によって見捨てられ、彼らの住居は破壊され、彼らの一家は離散し、彼らは半分死んだ男のようであった。彼らの心は依然恐怖と「天上」(Heaven)から彼らを打った天罰の記憶によって満たされていた。彼らは依然、「破壊者」(the Destroyer)の恐ろしい光景の記憶によって満たされており、そして彼らは何を為すべきかを知らなかった。

ファラオは自分の街に戻る事はなかった。彼は自分の世襲財産を失い、そして何日もの間悪鬼によって捕らわれた。彼の女性たちは犯され、そして彼の財産は略奪された。「暗黒の子ら」(Children of Darkness)は雄羊と(色事に)夢中にさせられて反抗する事もなくなった強姦された女たちで神殿を汚した。彼らは、老人、若者、そして少年などの残された者たちを全て奴隷とした。彼らは人々を虐げ、彼らの楽しみは(奴隷たちの)手足の切断や拷問であった。

ファラオは自分の希望を棄てて、南方へ向かって西に位置する湖のある地方の向こうにある荒野へと逃れた。彼は砂漠の放浪者たちの間でりっぱな人生を生きて、本を著した。

侵略者たちの元ではあるものの、良い時代が再びやって来て、船が川上へと帆走した。空気は浄化され、「破壊者」(the Destroyer)の爪痕は無くなり、そして国土は生育するものによって再び満たされた。生命は全土を通じて新たにされた。

「ケア」(Kair)が、「ランブデス」(Rambudeth)を建設後、「ファラオ・アンケッド」(Pharaoh Anked)が死ぬ前に、暗黒の日々の時にこれらの事を「光の子ら」(Children of Light)へと教えた。

これについては、この国そして我々の母語で「ルウェダー」(Leweddar)によって書かれ、彼自身がそれを保存する事を選んだ。それは後の時代まで日の目を見る事はなかった。


脚注

注1:これは所有者を識別する印を家畜に焼印として付けているということである。

注2:原語は"beascs"。これは前後の文脈から"beasts"の誤りであろう。

注3:原語は"There as ..."。これはおそらく"There was ..."の誤りであろう。

注4:原語は"hadfallen"。これはおそらく"had fallen"の誤りであろう。

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