第十六章 神の霊

「私はこの世の全ての物に潜在している不滅性である。発光して全ての物を満たす光であり、全ての物をその形へと保つ力である。私は悪が触れることが出来ない純粋なるものであり、傷つけられない流れであり、至高なる思考の噴出口、尽きることのない意識の井戸、永遠なる光である。私は人間の魂が関係するものである。私は魂の力であり、その生命であり、その力である。私は魂に答えるものである。」

「私は元気を回復する水の爽やかな冷たさであり、太陽の元気づける温かさである。私は月明りの静けさ、そして月光の優美さの中の平穏である。私は静けさのうちに聞こえる音で、孤独にあって感じられる交友であり、そして人間の心を奮起させるものである。私は若者の笑いの中の愉快さであり、また乙女のため息の中の優しさである。私は全ての生き物の生命の中の喜びであり、そして覚醒した魂の心における満足である。私は美しい者たちにおける美であり、香りのよい者たちにおける香気である。私は蜂蜜の甘味であり、香水の香りである。私は力強い腕の力であり、笑顔の中の哀愁である。私は善と適度な欲求を駆り立てる力である。私は喜びにおける陽気さであり、人生において変化を求めるものであり、睡眠による元気回復である。が、私はそれら全てに存在するにもかかわらず、私はそれらに含まれてはおらず、そして、私がそれらの中に存在するというよりもむしろ、それらが私の中に存在するのである。人間たちの言葉は、荘厳なる事物を描写するのにどれ程みじめであることか!人間たちの魂が眠っている状態では、惑わしの雲に包まれており、どうやって人間たちは私について知らされることが出来るであろうか?」

「私は至高なるもの、永遠なるもの、「神」のものにして「神」から出ずるものであるが、「神」ではない。炎に対する熱のように、花に対する香気のように、ランプに対する光のように、私は「神」に対してそのようである。私は物質中にて作用する「神」の力である。私は創造物のうちで最初に創造されたものであり、全ての創造物が並んでいる永遠なる紐である。私は「神」の能力のある思考である。私は「神」の創造する命令によって生み出されたものであり、その中で全てのものが生命を共有している。私は全てのものを繋ぎ合わせる枠組みの「主」(Lord)である。」

「私は枠組みを与える力であり、私はその流儀の元気づける仲間である。私は人間たちの期待と希望に実体を与えるものである。それ故に貴方がたが望む随意の方式で私について考えるがよい。私は気さくなものであり、慰めるものである。私は「永遠なる源泉」(Eternal Fount)より湧き出る霊感の流れである。私は「中心なる太陽」(Central Sun)から輝き出る愛の光輝である。私は全ての物の内にある。」

「私は生命の樹の根であり、「神の書」(Book of God)に書かれた言葉である。私は知識の守護者であり、魂の知恵である。私は音を調和させるものであり、力の管理人であり、物質を維持するものであり、形を維持するものである。私は時間の巻物を展開して、その変化を記録する。私は過去と現在の読み手であり、変化の書記であり、機会を選ぶものである。」

「私は勝利であり、勝利への苦闘であるが、それ以上であり、私は敗北を打ち負かすものである。というのも、私は敗北における勝利だからである。私は善良なる者たちの善であるが、それ以上であり、というのも、私は失敗から生じる成功だからである。私は、他の全てがなくなった時に残っている偉業である。」

「私は秘密の神秘を覆い隠す崇高なるものである。私は隠された事物を油断することなく開示する守護者である。私は知りたる者の知識である。私は全てのものが芽を出す種の中にある種である。私は全てのものが構築されるところのレンガである。私はそれ以上であり、私はレンガの中に含まれる粘土と水である。私は全ての動くものにおける動きであり、私がなければ動きは存在しない。私は全ての安定したものにおける安定さであり、私がなければ如何なるものもその形を維持することは出来ない。」

「私は無数の形についての熟練工であり、数えきれない色についての芸術家である。私の仕事は人間たちの知識の範囲を超えたところにあり、私の作品は人間たちの視野を超えたところにある。私の傑作は決して、死すべき定めたる人間の目によって見られることはないであろう。」

「息の中に滞留し、かといって息そのものではなく、息そのものは知ることも影響を及ぼすことも出来ず、息を息自体の中から管理するもの、それが私である。声の背後にあり、声そのものは知ることも影響を及ぼすことも出来ず、声自体の背後から声を管理するもの、それが私である。目の中にあり、かといって目そのものではなく、目そのものは知ることも影響を及ぼすことも出来ず、その中から目を管理するもの、それが私である。触覚の背後にあり、かといって触覚そのものではなく、触覚そのものは知ることも影響を及ぼすことも出来ず、その背後から触覚を操るもの、それが私である。が、貴方は次のことを知らねばならない。私は貴方ではなく、貴方は私でもない。貴方が私の中に住むように私は貴方の中に住むにも関わらず。死すべき定めたる人間たちの手を通じて書き留められたそういった不十分な言葉を、知恵に解きほぐさせよ。」

「「昼間の主」(Lord of the Day)から照る光輝、「夜の女主人」(Mistress of the Night)から放たれる優しい薄光、暖炉の炎からの元気づける赤熱、これら全ては私の実体である。私は地上を愛で貫く。私は種を発芽させる。私は全ての生き物の息の中の息である。私は花の甘い香りであり、食酢のにがい風味である。私は全ての物の内で差異化させる真髄である。」

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