第十章 ハーマネターの死

エルシュンバン(Elshumban)が軍隊に集められた時代、ハーマネターは彼の世帯とアンチェティの世帯と共に出発し、「真水の大河」(Great River of Sweet Waters)と「西方の苦い流れ」(Bitter Waters of the West)の間にある土地に住み、そこに宿営所を建てた。彼らは、幾人かの人々はハーマネターのように話す場所に滞在し、彼らと共に人殺しがいたが、その土地の人々はハーマネターとその同行者たちが彼らの間で平和に暮らせるようにした。その時代には、人々は「イナハナ」(Inahana)に悩まされていたからである。

自分に果された仕事がほとんど終わった時、ハーマネターはその土地での生活の日数がもう多くは残されていないことを悟り、それ故に彼は寂しい場所へと行った。そこで彼は、彼の霊を投げかけて、多くの日々を断食し、「神々の父」(Father of the Gods)との交わりを試みたが、「神」の声は静かなままだった。そこで、彼はその場所を去り、洞穴へ行って、何日もの間薄明りの中でそこに住んだが、そこでもまた「神々の父」からの応答はなかった。それでハーマネターはその洞窟を発ち、彼の人たちのもとへ戻り、そこで彼が次のように言うのが聞こえた。「ああ、本当に、私の「神」は私を見捨てて、私の嘆願に対してだんまりとしている。が、私は以前私に言いつけられた、また偉大なる「書」(great Book)に書かれているすべての事を成した。何故ゆえに私は失敗したのか?」

その後、彼は人々から離れ、一人で寝た。というのも、彼の心は耐え難かったからである。しかし、見よ、夜に彼は夢を見た。夢の中で彼は、白い亜麻布の布地に「聖なる象徴」(Sacred Symbols)が広がっていて、それぞれがその形式に応じて表示されていたのを見た。彼がそれらを見つめて、それぞれのそれ自体の数によって数えると、一匹のロバがやって来て「聖なる象徴」を食べてしまった。そして、見よ、そのロバはハヤブサとなった。その後、彼が見ていると、そのハヤブサは雌牛となり、その角の間には銀の王冠と金の王冠があり、その雌牛はハーマネターに話しかけて言った。「私のミルクを飲み、ミルクで貴方の目を聖別せよ。かくして、貴方の目は開き、貴方は見るであろう。」ハーマネターはミルクを飲み、目を聖別した。そして、彼は目を覚ました。夢を記憶していて、賢いので、彼はその夢を解釈するために他の人が必要なかった。それでその後、彼は直ちに、理解力ある者が知るであろう、なさねばならない事を実行して、人々の元を発った。

ハーマネターは、およそ丸一日の旅の距離にある寂しい場所へ向かって出かけた。道半分ほど行くと、ハーマネターは真昼の太陽のもとで疲れ切り、一本の木の下に座ってその影で休んだ。それから、彼が眠気を催すと、見よ、巨大な閃光が「天」(Heaven)から下って来て、彼の目の前の地面を打った。彼は力強い鞭の音のような大きな騒音を聞き、目が見えなくなった。その後、彼は声が言うのを聞いた。「見よ、私はここである。始まりにおいて、「神々の神」(God of Gods)にして、「人間たちの神」(God of Men)である。」これを聞くと、ハーマネターは顔をひれ伏して叫んだ。「おお、「偉大なる者」(Great One)よ、私は「貴方の」(Your)しもべです。」

それから「神」は言った。「何故に貴方は私に対する扉を開こうとしたのか?人間の種族は穢され、人間たちはもはや「私」(Me)と共にいないので、私は撤退した「者」(One)、「隠された者」(Hidden One)なのではなかったのか?」

ハーマネターはまだ地面にひれ伏していて答えた。「おお、「神々の父」よ、私、「貴方の」しもべは「貴方の」意思を知るつもりです。私は務めをほぼ終えており、それが貴方のお目に良くかなうのかどうか、あるいは私の務めは貴方の祝福無しになされたものであるのかを知ることを求めているのです。」

「神」はハーマネターに答えて言った。「これは「聖なる事」(Sacred Thing)であり、人間たちが「私」(Me)と共に歩んでいた日々から保存され、受け継がれてきた遺産ではないのか?それ故に、神聖を汚す人間たちの目に開示されないことを確実にするために、注意を払わなければならないとはいえ、それは良い事である。その調合は、正しく混合されるならば、人間たちが圏を跨ぐことを可能とするが、他の用途として使うと、それはまた無限に近い潜在力と最高の女性との楽しみを人間たちに与える。それ故に、そのようなものは注意深く保護しなければならない。というのも、より劣った人間たちの手にとって、それらは確実に乱用されるであろうからである。が、全て書かれた通りにしておくことだ。貴方がしてきた通りにそれを扱うがよい。」

「貴方は「私を」(Me)「神々の父」と呼び掛けた。そしてまた、貴方はこの点について誤っていない。確かに、「私」(I)は「隠された神」(Hidden God)、「秘密に顕現する神」(God of Secret Manifestation)、「不当な扱いを受けた神」(Wronged God)、「裏切られた神」(Betrayed God)、「失望した神」(Disappointed God)である。「私」は、人間たちを「私の」相続人とすることによって彼らに愛の神聖さを与え、彼らを神聖さの分担者とし、「私」と共に共同創造者とすることを求めた「神」である。しかし、人間たちは、邪悪さだけを通じてではなく、その弱さと愛の楽しみを通じて、彼らの生得権を一蹴した。それ故に、かつて提示された愛は今や、その栄光のすべてにおいて表示されることは出来ない。その美しさにおいて現れることも出来ない。愛は今、その苛烈さと懲罰と共に変容させられなければならない。これは、神性の承継者となる者たちが減少することのない力と共に戻り、彼らの弱さや無益な愛の慰みを追放することができるようにするものである。次の点を貴方は知るべきである。神性そのものは創造されたものではなく、贈り物のように与えられることもないということを人間たちは知ることが出来る。それは成就の王冠としてやって来るものである。「私」、「全能なる神」(Almighty God)、熟考により一万の言葉を創り出すところの者が、これを言うのである。」

「人間たちは、時代を超えて言うであろう事として、次のように言ってきた。「何故、もし「神」が全能であるならば、直ちに完璧さを創り出すことが出来ないのか?何故「神」は直ちに神聖な愛を知る存在を創り出さないのか?地上には何故あらゆる試練と艱苦があるのか?」次のことを知りなさい。貴方がたにとって時間的に長期間であると見えるものは、私にとっては、永遠の瞬間における思考のほんの閃光に過ぎない。私が息を吸い込んだとき、たくさんの地上のものや圏は存在しなかった。私が息を吐いたとき、たくさんの地上のものや圏が存在するようになった。私が息を吸い込むと、それらはもはや存在しなくなる。全てのものが「永遠なる者」(Eternal One)の中に存在し、人間たちが時間の広がりとして知ることは、創造の行為である。」

「射手の手から放たれた矢の飛跡に注意を払いなさい。矢はたわんだ弓から飛び立ち、時間が過ぎて、矢は的に達する。しかし、「私」にとって、その矢は同時に弓を離れ、的を射るのである。距離、時間、そして変化は「私」と共には無い。かつて「私」、貴方の「神」は、「私」の子孫である人間とは分離していなかった。今や、「私」は人間の目から覆い隠され、それは私がそのように望んだからではなく、人間がそれを引き起こすことを選んだからである。人間が奔放にその生得権を踏みにじるので、我々の間の障壁はより稠密に発達し続ける。今後、その障壁は長く困難な準備によってのみ貫通することができ、その時においてさえ、それを行う者は鍵を知っていなけらばならないであろう。「私」は貴方のところへ来た。貴方の準備によるのではなく、貴方の「神」は常に人間たちへ心を向けることができるからである。我々の間にこのような障壁があるが、純粋な心を持ち誠実に祈る者に対しては受け付けないものではない。こういった事を人間たちは知るべきである。貴方に関しては、貴方の余生は数えるほどであるが、貴方は今や、他の人の手によって蒔かれて広められるであろう種を確保している籠に過ぎない。「私」が話した多くの事は人間たちの耳にいれるためのものではない。というのも、そのような知識は、自由に与えてしまうと、彼らの利益とならないからである。他の事どもは彼らの理解を超えている。それ故に、それらは未だ生まれざる世代の人間たちに向けて記録せよ。人間たちは今や子供のようなものであり、子供向けの物語を教えることによって、再び子供のように学ばなければならない。」

「それ故に、ここから行きなさい。アンチェティの所へ行き、彼にこれらのことを告げなさい。また、「存在なる私」(I Who Am)である彼の「神」は、彼を種蒔き人として選んだことを伝えなさい。「存在なる私」が、彼が「私」の声を聞くことができるように、彼の歩みを導き、我々の間の障壁に扉を開こうとしていることを彼に知らせなさい。今や貴方の目で再び見、そして「私は私なる者」(I Am Who I Am)を見よ。」

その後、ハーマネターは「神々の父」の顔を見た場所を去り、放牧地の真ん中に建てられた彼の仲間たちの宿営所へと戻って来た。彼がだんだんと近づくと、流水の傍に家畜が横たわっていて、その間で人間たちが動き回っているのを見た。家畜たちは死んでおり、その腹は膨れていた。人々はハーマネターの元へやって来て叫んだ。「見よ、我々の子供たちの食べ物が彼らの口から取り上げられてしまった。これらの家畜は、その腹の中で炎のように燃える毒草を食べたので、家畜らは水を渇望し、腹が溢れんばかりにいっぱいになるまで水を飲み、その腹は内側から破裂し、それ故に家畜たちは死んだ。貴方が「神々の父」と呼ぶこれはいったい誰なのか?恐らく神々は父をもつであろう。が、人間を保護する神はどこにいるのか?「人間たちの父」(Father of Men)である神はどこにいるのか?

貴方が我々の元を去って、神々の事について「彼自身」(Himself)に関心を持つことが出来、人間たちの幸福には全く関心がない「称賛される者」(Exalted One)へ敬意を払っている時、我々の家畜は死んだ。貴方の言葉の為に、我々は「シェマキン」(Shemakin)への祭壇を建てたり、「ヤハナ」(Yahana)へ敬意を払うことを顧みないで来た。本当に、我々は欺かれてきて道に迷わされた人間たちだ。我々は、その目を上へ向けて歩いてきて、流砂に飲み込まれた人間たちだ。それで話してもらおうか、おお、賢い者よ。誰が人間と家畜の神々であるのか?」

これはハーマネターの心を激しい怒りで満たし、彼は激怒した人々に向かって大声で叫んだ。「何故に貴方がたは私に向かって大声で叫び、何らかの貴方の助けとしてやって来る神を求めるのか?ただ一つの「神」があり、貴方がたが神々と呼ぶそれらのものはただの「神の」一員の表現に過ぎない。何故貴方がた自身の怠慢のために「神」に責任を押し付けようとするのか?「神」は人間に仕えるすべての生き物に対する所有を放棄し、貴方がたの手に委ねたのではなかったのか?森や荒野の獣たちを見よ。そういった動物は毒のある草を食べているのか?そういった動物は有害な草や養分のある草について知ることが出来ないであろうか?病気を癒す草や死をもたらす草を?誰がその知恵を獣たちに教えたのか?人間の怠惰な世話を知らず、「神」の世話となる生き物がいて、それ故に、そういった獣たちは致死的な草から無事で、それを通り過ぎるのである。しかし、貴方がたは、これらの哀れな獣たちがそういった毒草の恩恵を受けさせるように連れて行ったが、貴方がたが自分たちだけでその獣たちの安寧に責任を持つのである。貴方がたの責任なのである。」

「「神々の父」は、家畜を、「彼」が他のすべての生き物たちを創ったように創った。そして、「神」が生き物たちのやり方を支配している間は、生き物たちは致死的な草から守られてきた。その後、人間たちがその生き物たちを、それらが人間たちの役に立つように、自分たちの管理下に置いた。生き物たちは、人間たちを養うミルクやチーズを、人間たちへ食料を補給する固く引き締まった肉をもたらした。獣の皮は眠る時に人間たちを暖かく覆った。こういったことを家畜は提供し、それは「神」に対してではなく、人間に対してである。それ故に、誰が家畜を保護して世話をしなければならないのか、そこから利益を得る者か、それとも利益を得ることなき「神」か?貴方がたは「神」が貴方がたの家畜の世話をすることを期待しているのか?貴方がたが日蔭でまどろんでいる間に、致死的な草から家畜たちを避けるために?それは単なる貴方がたの怠惰故の報奨なのではないのか?貴方がたはその草が致死的であることを知っている。が、人間の口きかぬしもべであるこれらの家畜たちは、それを知らない。というのも、その家畜たちは貴方がたの世話に引き渡されているからである。貴方がたの勤勉な保護を家畜たちに与えないのに、貴方がたは家畜たちが与えるもの全てを受け取ろうとするのか?「「神」が見捨てなさった我々の災いだ。」と叫ぶ貴方がたは、どんな人間なのか?自分たちでやらかした災難において我々自身を助けるために、どんな神を我々は求めるであろうか?男らしく行動をおこすがよい。その肩には貴方がた自身の怠惰の重荷と勤勉さの欠如を背負って。「神」が人間を失望させることを決して恐れるな。というのも、もし人間が人間の責務を遂行するならば、「神」は「神」の責務を遂行する。及第点に達しないのは人間なのである。自分が与えるよりも、もっと多くを得ようとするのが人間なのである。自分の利益の為に人間が得る物はすべて、必ずや人間の責任となるのである。人間は自分で使うために望むものは何でも手に入れることを許されたが、そうすることによって、人間はその世話と正しい使い方についても責任を引き受けなければならないことを、「神」は命じた。これは不公平であろうか?」その男たちはそれ以上何も言わなかった。

ハーマネターはその後、男たちに水の中から家畜を引き揚げさせて、致死的な草を食べた家畜のうちのいくつかは救助された。ハーマネターはそれからその牧草地を分割し、人を遣って致死的な草の生えている場所を調べさせ、それを土壌から刈り取らせた。

ある日、ハーマネターは宿営所を歩き回り、一人の男が、新しく生まれた彼の娘 注1 を埋めようとしている所に出くわし、そしてハーマネターはその男のそのような行いについて激怒した。そのような行いは、砂漠の放浪者や荒野に住む野人によって行われる忌まわしき事であるからである。その子供を取り上げて、ハーマネターはその子をアンチェティの妻の所へと連れて行き、彼女はその子を救ったので、その子は生きながらえた。その子は、心の純粋さを意味するマハット(Mahat)と名付けられたが、彼女の目を塞いだ砂の為に、彼女の目は盲となった。

宿営地の周りのよそ者たちは、ハーマネターの行った事の為に、彼に対して立腹した。また、ハーマネターがその子の父を打擲したので、彼は血を流し、彼らはその流血の為の償いを要求した。彼らは言った。「これは不当なる行いである。というのも、娘の為の食べ物がないためにその娘を埋めたその男は、我々の目には何も悪い事はしていない。その娘は不名誉のうちに晒されているよりも、地中に埋められてしまった方がより良いのではないか?娘が生きるべきであると決めるのは父なのではあるまいか?女が自分自身の魂を持つのか?女は肉体を作り出す製造者に過ぎず、その魂は男によって、女の管理に引き渡されるのではあるまいか?」

ハーマネターと共にいる者たちは数多く強かった一方、宿営所の周りのよそ者たちはそれほど数が多くなかった。しかし、ハーマネターは流血の為の弁償を要求する者たちに対し、公正に取り扱った。彼らには一片の銀と屠殺用の子牛を与えた。かくして、マハットはアンチェティの世帯へやって来た。

ハーマネターはアンチェティと共に座っていて、彼に言った。「私は貴方に、私が一本の木の下で独りでいた場所に座っていた時に起こった事、そして賢くなるために貴方が知らなければならない事を話した。私自身の手によって取り組んだ貴重なものが貴方の手に委ねられ、そして貴方は申し分なく「聖なること」(Sacred Things)と「神秘」(Mysteries)について教えられた。貴方には、この場所では成就することが出来ないかもしれない運命がある。一方、ここから得ることが出来る食物は日に日に減少していく。それ故に、我々はここを発ち、「苦い流れ」(Bitter waters)を経由して旅をしよう。というのも、もし森を経由して、あるいは広大なる荒野を通って行くならば、我々は生き延びることが出来ないかもしれないからだ。我々の家畜の群れは我々の前に追い立てて行くことが出来る。というのも、道は広く、水が良く手に入るからだ。我々はこの場所で足留めされないことにしよう。というのも、ここの人々の間には既に不安があるからだ。」

そこで、彼らはその場所を発ち、苦い流れに向かって旅をし、そこにたどり着くと、南向きへと方向を変えて、「バソア」(Basor)にたどり着くまで彼らは旅を続けた。そこで、彼らは野営を張った。というのも、死の病がハーマネターに迫り来ていたからである。彼が羊皮の長椅子に横たわっている時、彼はアンチェティを呼びつけたが、アンチェティは来なかった。というのも、彼はその土地の斥候のために彼らよりも早く出かけていたからである。しかし、アンチェティはハーマネターが地上から去る前に戻って来て、ハーマネターは彼がそこにいることを知ったので、彼を自分の傍に呼んだ。そして、ハーマネターは言った。「私の時は手近にやってきている。が、私は恐れてはいない。全てが暗黒と陰鬱である人間たちが塵を食べるような場所へ行くわけではないことを知っているから。私の青年時代の恐怖は何の実態もないただの影であり、「真実」(Truth)の純粋な光の前に霧消してしまった。」

「貴方については、大いなる運命がある。貴方の手が届き、貴方の心が望むものを掴みますように。そして、それを得ることができたら、無知の暗愚からすべての人々を救い出すためにそれを用いなさい。全土を教化するために網のように光線を降り注ぐ太陽の如く出て行きなさい。誠実なる人が金持ちになり、不誠実な人が貧乏となる土地へ行きなさい。というのも、富が不誠実さと欺瞞の報奨となることがなくなるように、差引勘定は調節されなければならないから。権力と地位の席を占める者が善良と誠実さの見本として前面に立ち、価値ある者以外が高い地位を占有せず、動産や不動産を持つ者たちが酷く貧乏な人を救うために、また弱者や保護されない者たちを虐げる者たちの力に屈しないためにそれを用いる、そういう土地へ行きなさい。」

アンチェティは言った。「しかし、そのような土地はどこにあり、私はどのようにそれを探せばよいのでしょうか?」ハーマネターは答えた。「そのような場所があったとして、そこへ行くことによって貴方はどんな良い成果を提供しようとすることができるのか?貴方がしなければならないであろう事は、既に他の人によって為されているのである。」

ハーマネターは死んで、地中深くに埋葬され、誰も彼の墓を知らなかった。彼が永遠に生き、彼が仕えた「神々の父」と共に住むことができますように!

ハーマネターに関するこれらの事は、何度も書き直されてきた。が、それらの複写は常に真実であった。

次に続くことは付け足されてきた。が、いつ誰によって為されたかを見出すことは不可能である。

ハーマネターはフィリスティア(Philistia)の地に埋葬された。これはオキチア(Okichia)か?

ハーマネターの父は、「一対の弓」(Twin Bows)の「ニンロッド」(Nimrod)であった。これを、私は疑うのだが、それについては述べられていない。

マキリム(Makilim)の石は、今でさえ「ベセガル」(Bethegal)にある。ヤドルの墓に書かれた言葉は、「彼は他の人のようではなかった故に、死んだ。」私、フラストニス(Frastonis)がそれを見た。

次の事は80世代が過ぎたときの事であろうか?

この種族の人間たちは信用できない証人たちである。「サマリテス」(Samarites)は、ヤドルは死すべき定めたる人間ではなかったと言う。

次の事を我々は真実として知っている。ハーマネターとヤドルの行いは、「ヒシテスの話」(The Tales of the Hithites)の中により完全に語られている。

アンチェティの盾は「大きな扇動者」(Big Shaker)と呼ばれた。その表面には「泥跳び鳥」(mudhopping bird) 注2 の似姿が描かれていた。この鳥が人々に書くことを教えた。というのも、その鳥は泥の跡を残し、人々は最初それを予言として読み取り、後にそれを読むことが出来る記号として形作ったのである。それらの記号は、我々の間の人々が読むことが出来るとはいえ、我々のもののようではなかった。

アンチェティは、ビール、パン、そしてミルクの地であるオキチアで金属の秘密について教えた。彼は光の「一対島」(Twinlands)において令名高かった。

マハットは、処女のままであった盲人であったが、彼女がまだ子供の時にアンチェティをこの土地へと導いた。彼女は知恵の内なる光で満たされており、霊によって見た。彼がどの道へ行くべきか分からなかった時、彼女の父が彼女を地面に座らせ、鳥の胸部の羽根を彼女の前に掲げて、彼女がそれをめがけて息を吹きかけた。彼はその羽根が指すどんな方向にも進み、決して道に迷って導かれることはなかった。後になって、言い争いを裁定する時や判決を下すときに、彼女はこの方法を利用した。彼女は非常にあがめられた。というのも、全土に置いて、彼女より賢い女性がいなかったからである。

この書き物を不滅とした我々は、「アンチェティの書」(Book of Ancheti)を遺棄した。というのも、それは我々の後に続く者たちにとって無価値であり、多大なる労力の作品であるからである。その書には、オキチアと呼ばれる土地に住む、野蛮人以下に違いなかった人々のための法を含んだ。というのも、彼は、新たに生まれた赤子を食べることや、義兄弟の契りにおいて彼らの血を食べるために混ぜたり乾燥したりすることや、陣痛時に女性をつるし上げることを禁じたからである。また、女性のプライベートな部分を切除したり、男性を去勢することも禁じた。


脚注

注1:原文は、"bis newly born daughter"。bis ではなく、hisであろう。

注2:どのような鳥のことを言っているのか、私には分からないが、直訳するとこうなる。

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