エノク書はエチオピア語版でしか現存しない。これはギリシャ語版から翻訳されたものであり、ギリシャ語版では少数の断片のみが現存している。 注1 ラテン語版は、同様にギリシャ語版から翻訳されたものであるが、第1章 9および第106章 1〜18の例外を除いて現存せず、これらの二つの節を含む断片は、ケンブリッジ大学キングス・カレッジのM.R.ジェームズ師によって、大英博物館にて発見された。この書は当初、ヘブライ語かアラム語のいずれかで書かれていた。チャールズは、第6章〜第36章、第83章から第90章はアラム語で、そして残りはヘブライ語であったと考えている。しかしながら、これらの二つの言語のどちらが本当の原文であるかを確実に述べる事は非常に困難である。何故ならば、バーキットが述べるように、「ギリシャ語版のエノクがセム語の言語からの翻訳であるとする最も説得力のある証明の大部分は、ヘブライ語やアラム語の原書にも同様によく当てはまる。」彼の意見では、アラム語が原本の言語である。「しかし、いくつかの節はヘブライ語由来を示唆しているように見える。が、決定的なものではない。」 注2
注1 : 第1章〜第32章 6、そして第19章 3〜第21章 9が重複したかたちでアクミームで1886-1887年に発見された。第6章〜第10章 14、第15章 8〜第16章 1および第8章 4〜第9章 4が、重複したかたちでシンチェルスにて保存されてきた。第89章 42〜49はギリシャ語バチカン写本(No.1809)に見出される。初期のギリシャ語の聖職者たちの著作における幾つかの引用もまた存在する。さらに、第1章 9、第5章 4、第27章 2は、聖ユダの書簡 14, 15にて引用されている。
注2 : Op. cit., p. 27.
Copyright© 2025-2026 栗島隆一 無断複製・転載を禁ず